転生した悪役令嬢ですが推しが尊すぎるので領地に引きこもります~追放されついでに最推しとひっそり暮らしたいのに非攻略対象のスパダリキャラに熱烈アプローチされてます~
第9話 Wイケボはほぼ拷問ですがなにか?
第9話 Wイケボはほぼ拷問ですがなにか?
それから1時間後。
わずかな従者を連れてその方は屋敷に到着された。
ホントにわずかっ!
側仕えらしい30歳くらいの男性と、その部下っぽい20そこそこの若い男性。
胸鎧の上にマントを羽織った騎士服に身を包んだこちらは20歳代後半から30歳くらいの男性3人。
騎士らしい3人はそれぞれ馬を牽いていて、その他に馬車を管理する御者が1人、遠目だけどまだ若そうな男性。
以上6人の従者の連れた、その方は。
「お久しぶりでございます。ヴィクトール王太子殿下」
恭しく臣下の礼を取るお兄様の声を私は顔をうつむかせたまま聴いた。
そう、突然のお客様は予想通り王族……しかも、現在留学中の第一王子ヴィクトール殿下……王太子殿下!
一時帰国の道中で、急に我が領に寄り道することにしたらしい。
お兄様が不機嫌だったのは、まだ婚約破棄の傷も癒えていない妹をフレデリック様の兄であるヴィクトール殿下に会わせなければいけなくなったことが原因みたい。
仮にも王族の訪問に、女主人代行の私が礼を欠くわけにはいかないものね。
まあ、私はあんなこともう気にしてないし、お兄様にはそれも伝えたけど。
それとは別に、王族への挨拶だもん、気を遣うよね、お兄様、めっちゃ緊張してる。
いつもより
常の優しげ囁き系ボイスも素敵だけど、よそいきの少し緊張した高目低音ボイス……これはこれで良いわぁ!
じゃ、なくて。
「久しぶりだな、クロード。3年……いや4年ぶりか」
クロードは、愛しのお兄様の御名前っ!
そして、お兄様を呼び捨てにしたそのお声は……待てっ! 何なのっ! めちゃくちゃ好みっ!
お兄様と同じ低音ボイスなんだけど、お兄様は、しっとりと包み込むような癒し系。
こちらは、落ち着きと爽やかさを兼ね備えた力強くも
どちらも艶やかで耳に天国でサラウンドイケボ……このまま昇天します……パタン。
って、マジに倒れるわけにはいかないっ!
「こちらは、妹のミレーネでございます」
「お初にお目にかかります。ミレーネでございます」
お兄様の紹介を受けて、私は眼を伏せたまま、しとやかにスカートのすそをつまんで
「……初めてではないぞ?」
不機嫌な響きをのせてヴィクトール様が私の挨拶を否定した。
「……失礼いたしました。もしや、王宮でお会いしたことがございましたでしょうか?」
けど、それってたぶん、ものすごく小さい時だから!
逆にその程度の関わりで見知ったふりする方が失礼だし……なんて言い返す分けにもいかないので、ひたすら低姿勢。
「殿下、妹に意地悪を仰らないでください」
「ハハッ、悪い悪い。クロードから何度となく『うちの可愛いミレーネは』って聴かされていたから、もう何だか見知った気でいたのだ」
お兄様の苦言に、いたずらがバレた子供のように笑って誤魔化しながら謝罪するヴィクトール殿下。
って?
今なんて?
『うちの可愛いミレーネ』?
あらやだ、ウフフ。
もうお兄様ったら、そんなに風に私のこと話してただなんて、もうっ、ウフ。
「そんな、それこそ子供の頃の話じゃないですかっ?!」
「15歳過ぎを『子供の頃』とは、お前は見た目よりだいぶ年寄りなんだな」
慌てるお兄様とからかうヴィクトール殿下の声。
見たい!
声だけでも至福だけど、なんかじゃれてるふたりを、見たいっ!
あの
というか、あんなに緊張していたお兄様なのに、こんな風に気安く話すなんて、もしや、わりと仲良しだったの?
……あ。
幼なじみイケメンふたりが再会し旧交を暖めて。
最初は身分の垣根を意識していたものの、妹をダシに昔の関係を思い出して……そして、そして……フフフフフフ。
とか?
見たいっ!
スクショしたいっ!
照れて頬染めているお兄様と、それを微笑ましく見つめながらからかうヴィクトール殿下をっ(妄想)。
「っと。そうだ、すまん。ミレーネ嬢、面を上げよ」
半分笑いながら、ようやく殿下の声がかかり。
ガバッっと顔を上げてイケメンふたりの『てえてえ』を見たい欲求を抑えながら、静かにそっと体を起こし眼差しを上に向け、て。
…………え?
「ほお。その瞳の色は、何となく覚えているぞ。それにクロードそっくりのこの美貌。弟はバカなことをしたなぁ」
「いえ、この度は、わたくしが至らぬために……」
必死で平静を保っていたけど、絶対声が震えてた。
「あのバカをかばうことはない。悪いのは全部アイツだ」
そりゃそうだ、じゃなくて。
何なの? イケメンだと想定してたけど、この方…………ヴィクトール様ってっ!
超絶好みのイケメンなんですけどっ!
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