#KAC20242 ピンクのかん

真留女

#1 ピンクの缶

それは何の変哲もない 1DKの民間アパート

住んでたのは始めは普通の女だったんだけど

何だか素性の悪そうな男が出入りし始めると

みるみるうちに 夜の女に変身していって

家賃も払わなくなって あげくに家賃踏み倒して

いつの間にか荷物持ち出して 消えてしまった


家主は泣く泣く部屋をこぎれいにリフォームして

新たな借主を探し始めた


  〝あらやだ また不動産屋が誰か連れて来た〟


「こちらです 駅からそう遠くないのに静かでいいですよ

 家賃も相場と比べてお安いですし お勧めです」


  〝この前は男一人だったけど 今度は夫婦? 

   いや同棲か? 女の方が水回り気にしたりして

   いい女アピールしてるし 〟


「ねえ この窓西向きじゃない?」

「いえいえ 西南西ですよ」

「西日 入るよね エアコン効かなくない?」


  〝そうよ 暑いわよ 健ちゃんすっごい嫌がってた〟


「すみません大家さん 今回もお断りの電話が…」

「またですか 何で決まらないんでしょうね この部屋は

 最初の内見の女の子は入口で〝ゾッとする ここ嫌だ〟

 って帰っちゃうし 次は戻ってから具合が悪くなって

 田舎に戻るって そんで次は…… 」

「まあまあ 断ってきた人たちの理由いちいちあげましても

 どうにもなりません そこで提案なんですが

 借主さんは若い方が多いので どうでしょう 思い切って

 押し入れをクローゼットにリフォームされては?」 

「はぁ また金がかかりますねえ」


リフォーム工事の担当者は 押入れのふすまを外し 

木枠を取り除き天井板を動かした するとそこには

ピンクのペンキの入った缶が置かれていた

そこに入っていたのはペンキだけではなかった


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