本を片手に異世界転生。魔導書ですか?いいえ、漫画本です!〜戦略級漫画士、立ち読みのヨミが世界を変える?〜

ゴシ

第1話 神様ですか?

 歩いても歩いても森、森、森。探せど探せど人も動物いない。


「なんで俺水飲みたいだけでこんなに苦労してるんだ?てかここどこだよ。はぁ。助けてよー、お母さーーーーん!」


 森のど真ん中で空に向かって俺は叫ぶ。だが叫んだところで状況が変わるわけもない。お母さんは近くにはいないのだから。


「コンビニもない、自販機もない。なんでこんな時に冷蔵庫の中切らしちゃってるんだろう。部屋帰ろうかなー......いや、帰っても漫画しかねーし。飲み物探そ」


 話す相手もいないから俺は1人ぶつくさと呟いてみるが、ただただ喉が渇くだけ。


 異世界に転生されるってこんなスタートなの?もっとこう勇者が必要で城の魔道士たちが召喚したとか、貴族の家で赤ん坊からスタートしてぬくぬくとした家で成長して学校に通い始めるとか。漫画の主人公って色々優遇されてるよね?考えてよ神様ーーー!


「ただの浪人生がいきなり勇者になるとか無理な話か。あーもー知らん。寝よ寝よ」


 近くの木陰で(というか森ばっかだから木陰しかないんだけど)俺は手に持っていた愛読書『週間少年サタデー』でも読みながらここまでの経緯いきさつをおさらいすることにする。











 俺、伊集院黄泉いじゅういんよみは福岡県の博多区で大学進学予備校に通う20歳の青年である。予備校から帰ってきてダラダラ漫画を読んでたまではいつも通り。勉強もせずただただ気楽な生活を送っていたはずだったのに。


「黄泉よ。おーい、黄泉よ」


 .........?


「黄泉よ、聞こえとらんのか?おーい、わしの話を聞いて欲しいんじゃが?」


 .............いや、聞こえてて無視してるんだよ。

 だって怖いじゃん、1人で住んでる家の中で話しかけられるとか!

 周り誰もいないし、でも俺の名前呼んでるし。


「……」


 幻聴、幻聴。漫画読みすぎだな俺。妄想入っちゃってる。怖い怖い…………


「…………だぁーーーーー!」


「ぎゃあーーーーーーーーーーー!!!」


 漫画を読み続ける黄泉だったがページを開いた瞬間、白髪白ひげの白衣爺さんが本から飛び出してきたのだった。


「わぁ、嘘!?。えぇ、何?だ、誰?」


「わしか?わしはお前らが言うとこの神じゃよ」


 神?神様?え?なんで?妄想?


「えっと…………漫画本の神とかですか?」


「はぁ?何言っとるんじゃ……お主は頭がわいとるのかの?漫画本の神て?そんな馬鹿な神おらんじゃろ、ははははは」


 半透明な神を名乗るじじいにバカにされ、少しイラッとする黄泉であった。

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