忘れ者

夜うさぎ

海-1

佐野海


私の名前は海(うみ)

パパと2人でマンションで暮らしている。


ママは私が幼稚園に入るより前に亡くなってしまった。

私にはママの記憶がほぼ無い。

ただ記憶にあるママは笑顔だった。

怒られた事もあったかもしれないけどそういう記憶はなかった。


女の子は父親に似るとかいう話を聞くけど

きっと私も父親似なんだろうな。

髪は癖っ毛で奥二重の目、勉強が人より少し出来るところ。

お父さんに似てるね。

昔から言われてきた。


それをパパに言うとふっくらしてるのはママ似だな。って笑ってた。

パパは食べてもあまり太らない体質らしい。


写真も少しだけで小さいアルバム一冊分に小さい頃の私とまだ若いママとパパが写っている。


パパにもっとないの?って聞いたら、

ちょうど仕事が忙しくて早く家に帰れなかったりして撮る機会がなかった。

これからいろんな所に行きたかったし写真も撮りたかったなぁ…

って悲しそうに言っていたので、気まずくなってあれから聞けなくなってしまった。


私にとって家族はパパだけだったので、

小さい頃はママは?お姉ちゃんとか妹欲しい〜と言って泣いたりしてパパを困らせた。


パパは小さい頃私をみーちゃんと呼んでいた。

海だからみーちゃん。


「ママはどこいっちゃったの?」

「ママはお空だよ。お空の上にはもう一つ世界があってそこで暮らしてるんだよ」


「みーちゃんもお空に行きたい」

「いつかは行くけど今はいけないんだよ」

「いつになったら行けるの?」

「順番が来たらね。パパが先に行くんだ。約束したんだ」

「約束?ママと?」

「ママと大事な友達と。だからみーちゃんはその後ね」

「うん。わかった!」


このやり取りを寂しくなる度にしていた。


ママがいたらよかったと何度も思った。

もし生きていたら妹とか弟とかもいたかもしれない。

もしそうだったら楽しかっただろうな。

でも、毎日喧嘩したりうざったく感じるかもしれないなぁ。ってたまに考える。


ママについてパパは詳しく教えてくれない。

私を可愛がっていた事。突然の事故で亡くなった事。

写真の中のママ。

決して太ってはいないけど、

産後だからか少しふっくらしてる気はする。


ふんわりした優しい印象のママ。

それが私が知ってる全てだった。







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