こころ踊る物件の内見理由とは

ろくろわ

こころ踊る理由

 一通り物件の間取りは頭にあったが、実際に見せて頂くと、やはりこころが踊る。

 まるで童心に戻ったかのようだ。


「それで左手に見えるのが居間になります。家具もそのまま配置されております。この部屋は主に両親が使ったりテレビを見たりするときに使います。そしてこの先に進んだところが台所になります。配置的にも玄関からまっすぐ進んだ先になり、食事を取るためのテーブルが完備されています」


 案内人の槍杉やりすぎさんが丁寧に案内してくれる。私は台所に向かう途中の二階に上る階段をチラリと横目で見て、はやる気持ちを押さえつつ台所を覗いた。台所も見たままだ。


「それではお待たせしました。二階の子供部屋を見に行きましょう」


 待ってましたと私は槍杉さんの後に続いた。

 むしろこの部屋を見るために内見を依頼したといっても過言ではなかった。槍杉さんと二階の襖を開け部屋に入ると期待を裏切らない光景がそこには広がっていた。


「槍杉さん!中を見ても良いですか?」

「えぇどうぞ」


 ニコニコしている槍杉さんの横を通り部屋の中に入る。まず私は子供部屋の押し入れを開けてみた。中には布団と枕が置いてあった。私はそっと枕の下に手を入れてみた。想像していた感触が手に伝わり、思わず槍杉さんを見た。


「良いでしょう」


 槍杉さんは私の反応を見て笑っていた。


「あのぅ、槍杉さん。子供の学習机の引き出しを開けてみても」

「えぇ構いません。ですが覗き込みすぎないように気を付けてくださいね」


 私はゆっくりと一番大きな引き出しを開けてみた。


「わぁ!こんな風になっているんだ!これは凄い!」

「ご満足頂けましたか?どうです?この一軒家は。立地も良くて近くには子供たちが遊べる空き地などもあるんですよ」


 中々に良い物件だ。内見できて本当に良かった。ただ私にはもう一件、気になる物件があった。私はその事を槍杉さんに伝えた。


「そうですか。確かにその物件も内見の価値はありますよ!担当が変わりますので連絡しますね!」


 私は槍杉さんの好意に甘え次の物件の内見を依頼した。


「それでは少しお待ちください」


 そう言うと槍杉さんは何処かに電話をし始めた。


「お世話になっております、槍杉です。晴奈沢はなざわ不動産の物件内見をお願いしたいのですが。はい、はい、はい。それではお願いします」


 電話を終えると槍杉さんがピースをしながら私にOKサイン作った。


「良かったですね!内見できますよ。なんと次の物件は家の家電製品全てを東芝製品に揃えているというこだわりの物件です。こちらの物件は週に何度か宅配注文も取りに来てくれるんですよ!」


 私のこころはさらに踊った。


 次の物件も楽しみだ。




 了

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