時空師の兄が私の一人暮らしの部屋をこだわりすぎて決まらない
最時
第1話 10部屋目
日没。
不動産会社の営業に部屋を開けてもらう。
「ブレーカー解除しますのでお待ちください」
「はい。
お願いします」
営業が中に入った。
「お兄ちゃん。
ここは大丈夫かな?
もう9部屋目だよ」
「そうだな。
中に入ってみてだな」
今日は不動産会社三軒目、部屋は8部屋見ている。
10時の開店時間から回って17時過ぎになってしまったがこれもマナのためだ。
妥協は出来ない。
マナが過ごしやすい部屋であることはもちろんだが、空間的にそこが良いかというのが大きなポイントだ。
地から離れるマンションの上階は地の影響は受けにくくなり、そこの空間の力が強くなる。
それがマナにとってできるだけ良い方向に働くこと。
そこが部屋選びの一番のポイントだ。
俺は時空師。
それが俺の能力だ。
風水師はいわゆる気の流れを感じコントロールする者。
時空師はその根源とも言えるその空間と時の力を感じコントロールする者だ。
つまり少々悪くてもある程度はよく出来るのだが、もちろん限界がある。
最高に近いポテンシャルを持った空間を探しているのだがそう都合良く見当たるものじゃない。
マナも疲れている。
来週に仕切り直しか。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
中に入る。
「お兄ちゃん。
私ここが良い」
「築年数も新しく、設備や収納も充実しています。
周辺環境や日当たりも良いです。
家賃もそこまで高いわけでなく、コストパフォーマンスは本当に良いと思います。
今回はたまたま先ほどキャンセルになった部屋でして、空けばすぐに決まってしまう人気の部屋なので、本当に運が良いと思います」
「そうなんですね。
お兄ちゃん、私ここにする。
今日申し込まないと他の人にとられちゃうと思うし」
「はい。
こちらの部屋を気に入っていただけたのなら、今日明日中には申し込んでいただいた方が良いと思います」
「そうだな」
四階の部屋。
いわゆるスポットと言うやつか。
ここは空間の力が強い。
不思議なものだ。
ここならマナにとっても良いだろう。
ただ、気になることが
「たしか、二階の部屋も空いていましたよね」
「はい。
ただ、女性なら三階以上が安心だと思います」
「そうですね。
一応見せてもらっても良いですか」
「わかりました」
「お兄ちゃん。私ここで良いけど」
「一応の確認だ」
本来、上空の方が空間の力を感じるものだが、下に何かを感じる。
悪い物でなければ良いのだが
三人、下の部屋へ向かう。
「実は、これから見ていただく部屋は事故物件というわけではないのですが、ここに入居されたお客様が次々と身体を悪くされていて、紹介を控えるように言われているんです」
「そうなんですか」
何かあるかもな。
「お兄ちゃん。
私さっきの部屋で良いよ」
「その方が良さそうだな」
「見られますか?」
「ここまで来たのだし、一応見せてください」
先ほどと同じように営業がブレーカーを解除しに入った。
「お待たせしました。
どうぞ」
玄関を入るとすぐに小さなキッチンで、その先に部屋のドアがある。
そのドアを見た瞬間に恐怖を感じた。
先に何か凄まじいものがある。
俺は後ずさった。
封印されていたのか。
今まで気づかなかった。
マナが靴を履いたままそのドアに向かっていく。
「マナッ!」
俺は叫んでマナの腕をつかむが想像以上の力に、マナの方に引き寄せられる。
そしてマナがドアを開けると、俺たちへ部屋に引き込まれた。
時空師の兄が私の一人暮らしの部屋をこだわりすぎて決まらない 最時 @ryggdrasil
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