第35話 あんまりセンスないな

せっかく計画書を作成して現地に行ったのに、二件目の案件もハズレだった。

 結局、今に至るも報告書がリアル風創作怪談だという話を先輩から聞けていない。

 オレと上野以外の一年生も、だんだんと案件調査に出る生徒が出てきたが、誰も“アタリ”の案件報告はしていない。一回目に“アタリ”を引いたと言う上野も、それ以降はハズレでしたという報告ばかりだ。


 (どうすりゃいいんだろう……どのタイミングで“アタリ”を創るんだ? そのうち誰かが教えてくれるのかと思ったが……そんな様子はないのに、初っ端の上野の報告書は注意されたり反感を買ったりした様子はない……シレっと創って報告すれば受け入れてもらえるんだろうか)


 しかし、創作怪談を自分で作る踏ん切りがつかない。結局、今回もオレは秋葉部長に「ハズレでした」という報告をするに留まった。

 いっそオレも上野の言う胡散臭い先輩と仲良くなってアタリ案件を創ってしまおうかとも思ったが、顔も特徴も、下の名前もわからない状況でそれは無理だろう。そういう虚言癖の奴に足元を見られるのも面白くない。

 仕方がないので次の案件プリントをもらってきたが……。


 (これもなぁ……話を創ろうにもいまいちパンチに欠けるな……)


 一応現地には行ってみるが、この話を考えた奴、あんまりセンスないな。


 プリントには『調査依頼:近隣ショッピングモールの特定の椅子に座って行う降霊術』と書かれていた。 

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