第9話 隠れ家

校庭の横、少し高くなっているところに隠れ家のような場所がある。

木が生い茂っていて、その下にベンチが置いてあるのだ。

そのベンチに座るとちょうど校庭を見下ろす形になる。

校庭で遊ぶ人間たちは私に観察されていることに気がつかない。

この優越感、別世界感がたまらないのだ。

「もーうほんっつっつと可愛いぃぃぃぃぃ!!」

ま、別世界感なんて小麦一人でぶち壊れるんですけどね。

「そうかー?分からん」

サッカーやバレーボールに興じる人間を観察しつつ、恋バナをテキトーに受け流す昼休み。

「歌上手いしさぁぁ!!」

「なんで知ってんの?」

「ふふふ春休みカラオケに行ったんだよなこれが!!」

「え!?二人で?」

五十嵐いがらしと三人」

五十嵐は青の苗字だ。

「くそ邪魔やん」

「掛け合ってもらったけど正直邪魔だったわ」

「それは正直すぎるて。感謝しろよ」

「てか五十嵐歌ど下手だったぞ」

「私も下手だから使えんなぁ」

余談だが私は青に勝てるところを集めている。

今のところ勝てるのは性格だね。

「てかさ、一か月後、修学旅行やん」

小麦がわざわざ笑いが収まってから話し始めた。

「楽しみだな。えせ関西弁しばかれるんとちゃう?」

案の定聞いちゃいない。

「自分、告白しよっかな」

シュートを決めたのか、校庭から歓声が聞こえた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る