第5話 一兎、二兎、ゼットエヌ

今日は今年度初の委員会があった。

私はまた学級委員をやることになった。

「受験あるよ?またやんの?キツくない?」

友だちの言う通り、この前の委員会決めでは立候補者が少なくて時間がかかったぐらい、みんなの受験に対する意識は高まってる。それに学級委員はいくつかある委員会の中でもかなり仕事量が多いところだ。

受験に100パーセントの力を注ぐ、という観点からすると、私の選択は間違っているのかもしれない。

でも、私は迷わず立候補した。

どっちも100パーセント。そんなことは不可能に近いって分かってるけど。

「お、雪もまたやんのね」

集まりの開かれる3組の前で青と会った。

「二兎追うもののみが二兎を得る、可能性がある」

そう返した。

これはS高校の謳い文句でもある。『可能性がある』は私が付け足したが。

新クラスの様子などを共有し、学年集会の運営についての話し合いを進めると、あっという間に最終下校時間だ。

今日はこれから塾か。

門を出て、バス停に向かう。

「じゃあな」

青の声が後ろから聞こえたので雑に手を振った。


『罰として来週はひたすら亜鉛を削らせます』

塾が終わり、LINEを確認すると、昇高しょうたか(メガネとスライムのキメラ)からこんなメッセージが来ていた。

委員会で部活に顔を出せないから代わりに指揮をとってくれ、と頼んだ朝の私を責めたい。なぜよりによって昇高に…。

ていうか粉末亜鉛を常備してない理科室ってどう思います!?

『花火にはちょっと早くない?』

なんとか罰から逃れられないかと模索する部長でありました。

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