第3話 ゴッドスライム
どうやら図鑑によると、リルムはゴッドスライムというらしい。
いままでも普通のスライムとはどこか違うと思っていたけど、ほんとうに別種のスライムだったんだね。
普通のスライムとなにが違うのだろうか、もっと詳しく見てみることにする。
基本ステータスということろを見てみると、そこにはなんと信じられないことが書かれていた。
「魔力……9000万……!? しかもテイム難易度SSS級だし……」
どうやらゴッドスライムの基礎魔力は9000万もあるらしい。
そんなの……神獣とか幻獣クラスの魔力だ……ありえない……。
でも、そんなの……。だったら僕はなんでリルムをテイムできたんだ……?
普通、自分の魔力より大きな魔力を持つモンスターは、テイムできないはずだけど……。
「そうか……テイム条件……!」
図鑑には、テイム条件という項目があった。
実は、モンスターをテイムするには、2つの方法がある。
それは、より大きな魔力で相手を屈服させるか、もしくは特定のテイム条件を満たすことだ。
だけど、テイム条件はモンスターによってさまざまだし、その方法はめったに知られていない。
普通は、魔力で無理やりテイムするのが主流なのだ。
ちなみにゴブリンのテイム条件は、【弱らせてから痺れキノコを食わせ、テイムする】という簡単なもの。
ゴブリンのテイム条件は結構広く知られていて、ゴブリンは誰でも簡単にテイムできる。
なのでゴブリンは初心者テイマー御用達の雑魚モンスターとして有名だ。
ゴッドスライムのテイム条件を読んでみると、こう書かれていた。
【ほんとうに心の優しい者のもとにのみやってくる。心が通じ合ったときにテイム可能となる。ゴッドスライムは自分で自分の主を見極めて、選んでやってくる】
ってことは、このテイム条件を満たしたから、僕はリルムをテイムできたってこと……?
そうか……僕とリルムが通じ合ったあのとき……。
昔、あれはまだ僕が村にいたころ――。
森の中で弱っていたリルムを僕が助けて、友達になったんだ。
「じゃあ、リルムが僕を選んでくれたんだ……。ありがとう、リルム」
「きゅい~♡」
そう思うと、より一層リルムとの絆を感じる。
「ちょっと待って……これ、もしかして他のモンスターも全部、テイム条件が載ってるの……!?」
だとしたら、これはとんでもない図鑑だ。
モンスターのテイム条件なんか、一個あたり100万Gとかで取引されるような貴重な情報だぞ……!?
しかも、スライムとか下級のモンスター以外のテイム条件は、わかってないモンスターばかりなはずだ。
だけど、このモンスター図鑑には、すべてのモンスターのテイム条件が載っていた。
「うわ……すごい……ほんとに……。見たことないようなモンスターのテイム条件まで載っている……」
テイム条件、それさえ満たせば、どんなモンスターでもテイムできてしまう……そんな重大な情報が、ここにはいくつも載っているのだ。
神話級モンスターに、幻獣モンスター、どのモンスターのテイム条件でも書いてある。
もちろん、テイム条件がわかっても、それを実際に満たせるかは別だけど。
だけど、これはとんでもない情報だぞ……。
モンスター研究をしている大学や、ちまたの冒険者テイマーたちが喉から手が出るほど欲しがるような情報だ。
それを僕は、手にしてしまった。
「この図鑑さえあれば……どんなモンスターでもテイムできてしまう……。はは……すごいな、これ」
もしかしたら、この図鑑を使えば、僕でも一流のテイマーになれるかもしれない。
僕は魔力が少ないから、一流のテイマーにはなれないと思っていた。
けど、この図鑑があれば、テイム条件を満たす形でモンスターをテイムできる!
実際、ゴッドスライムであるリルムだってテイムできたんだから……!
「この図鑑はすごい……。もっと読もう……!」
テイム条件の他にも、もう一つ重要な情報がある。
それは、【特性】だ。
モンスターにはそれぞれ固有の特性があるらしい。
いままでリルムは普通のスライムと同じ特性だと思ってたけど、違うみたいだ。
ちなみに、普通のスライムの特性は【毎秒HP1回復】というあまり使えないものだ。
えーっと、ゴッドスライムの特性は――。
【神の加護:味方パーティのステータスをすべて5倍にする】
「な、なんだこれは……!?」
味方パーティのステータスを全部5倍にするだなんて……!?
そんなの、めちゃくちゃ強いじゃないか……!
まさかリルムにそんな特別な力があったなんて、知らなかった。
「あ、でもこれ……もしかしたら大変なことになるんじゃないか……?」
これは逆を返せば、リルムがパーティから抜けたら、つまりステータスが5分の1になるってことだ。
僕とリルムが抜けて、サイアックたち【金色の闇】は今ごろどうしているだろう。
この特性のとおりなら、彼らのステータスは大幅に下がっているはずだ。
「まあ、サイアックたちなら大丈夫だよね。もともとかなり強いし……」
それよりも、もっとこの図鑑の事が知りたい。
僕は夢中で図鑑のページをめくるのだった。
――――――――――――――――
【ゴッドスライム】
★★★★★★★★★★★
・魔力 9000万
・テイム難易度 SSS級
◆説明
謎に包まれた神秘のスライム。
めったに人前に姿を見せない。
その数は希少。
◆テイム条件
ほんとうに心の優しい者のもとにのみやってくる。
心が通じ合ったときにテイム可能となる。
ゴッドスライムは自分で自分の主を見極めて、選んでやってくる。
◆特性
神の加護:味方パーティのステータスをすべて5倍にする
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