神は宇宙を創りたもうた

ねこ

第1話 プロローグ

「ねぇ、ねぇ。誰がこの世界を創ったか知ってる?」


「うん、知ってるよ」ラルフは迷わず言った。


神様だよ。


「じゃあさ、神様はどうやって世界を創ったと思う?」

キャシーはラルフを試すように質問した。


どうやって?「そんなのわかるわけないじゃん。神様は神様なんだから魔法かなにかの特別な力が使えたんだよ」


「うんうん。そうだね」

キャシーはラルフの答えに満足していた。


「君はその特別な力とやらを使うことができないの?」


「できないよ、当たり前だろ。人なんだから」


ラルフはだんだんキャシーに苛ついてきた。キャシーがにこにこ笑うのもそうだし、自分がキャシーを見上げる形を取らされていることにも苛ついた。


「なに偉そうにしてんだよ。お前たちは翼があるだけ、それだけの違いで人を馬鹿にするなよ」


「ごめんよ。怒らせるつもりじゃなかったんだ。ただ一応聞いておきたくてね」

天使キャシーはラルフを宥めるように謝った。


ぱさり。翼がゆっくりと動く。

「じゃあ、ひとつ君に秘密を教えてあげようか?」


「何さ」

ラルフは秘密という言葉を聞いただけで興味がそそられていたが、それを隠そうと仏頂面で尋ねた。


「私たち天使はね、神と神が持っていた特別な力は別々だと考えているんだよ」


ラルフはよく理解できなかった。「どういうこと?」さっきまで怒っていたことも忘れて聞いた。


「つまりさ、神には特別な力があったわけじゃなく、神が用いた道具が特別だったんじゃないかってことだよ」


そう…で、そんな予想をして何になるんだ?


ラルフはキャシーが教えてくれた秘密にがっかりした。


神様から直接魔法が生み出されるか、道具から魔法が生み出されるかっていう違いだろ?

どっちだっていいや。


「つまり神はただの生物で、私たち天使はその特別な力が宿る道具を探しているのさ」


何だって?神様が生物?


キャシーはついに変なことを言い出した。

ラルフはその考えをうまく飲み込むことができなかった。天使たちは間違えていると思った。今までそんなこと誰も言ってないぞ、そんなわけあるか。



何か嫌な予感がした。

今のキャシーは何か違う。相変わらず子供のような話し方だけど、目つきが違って見えた。


キャシーは最後に、私たちはその特別な力を持つ道具を"聖杯"と呼んでいる、と言った。

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