8. それは、応急措置という名の心の闇

 ひとの心は難しい。

 よく、思うだろう。


「自分よりも大変なひとはいる」


 そう思うことで、自分の「つらい」を、「そんなもんじゃない、自分はまだまだだ」

だとかと、感情に無理やり言い聞かせ、蓋をする。

そうすることで、心に応急措置という名の「鎖」をしている。

 けれど、鎖はいずれ錆びるものだし、応急措置は、その場しのぎでしかない。どちらにも限界がある。

その限界が、ひとの心と体を髄まで蝕み、果てには壊してしまう。


 それとともに。

 鎖は、壊れたからと勝手に消えてくれるような、自然治癒の効能はさほど持ち合わせていない。

 「時が解決」なんて、してはくれないから、子供が大人になっても、苦労しているのが現状だろう。


 必要に想うのは。

 「理解者」がいること。

 たった一人でも、「つらい、苦しい」と思うことを肯定してくれるひとがいること。それも、できるだけ身近に。そして真からの心で。

 それだけでも、かなり治癒になるものだ。


 闘っているのは、なにも本人だけなわけはないのだ。

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