16

 次の日。


「起きろー。メイヤー。時間だよー」


 遜色ないいつもの朝だ。


 母さんの声が、寝ているぼくの頭の芯にびしびし響く。


 うーん。あともうちょっと……


「いいかげんにしなさいっ!」


 母さんがぼくの手首を、がしっとつかんで無理やり起こす。ぼくはベッドに座らされる。


 あのさ、ぼく、二日も連続で人の命を救ったんだよ。ちょっとくらい寝坊したっていいじゃないか。


 心のなかで反論するが意味がない。ぼくの家には古代インドのカースト制度が根づいている。


「ほらっ。さっさと顔洗って学校行く! どうしてあんたは、毎朝こうなの?」


「どうしてって言われても、それはぼくが……」


「ぼくがなに?」


「なんでもないです」


 夢のなかではヒーローだって言ってもどうせ伝わらないか。


「はいはい。わかりましたよーだ」


 ぼくはふてくされて、学校に行くしたくを始める。


 いいです。どうせぼくはダメなメイヤです。


 誰一人、ぼくのことはわかってくれない。


 なんだかむしょうに、泣きたくなった。

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