末梢起源説
吊り橋効果の原理は、スリルや恐怖を感じたことによる心拍数の上昇を恋のせいだと勘違いしてしまうことである。リーダーシップ育成研修のプログラムによるストレスと、ニコチンの過剰摂取は心拍数上昇という吊り橋効果のトリガーを引くには十分であった。そしてジェームス=ランゲもびっくりの速度で僕はアズサちゃんに夢中になった。研修が終わってからも毎日のようにメッセージのやり取りをし、彼女との仲を深めていった。向こうから仕事の相談が来たり、互いに出会い系で会った愉快な異性の話をしたりと話題は尽きなかった。そうアズサちゃんはメイクの通り、出会い系のヘビーユーザーで、数々の男の心とタマを手中に収めていたのであった。彼女は十代の男の肌のハリや、パチンコに行きたくてセックスの帰りに金をねだってくる男のどうしようも無さを一人一人愛らしそうに語ってくれた。彼女は男達に依存するでもなく、男達を性欲のはけ口と見るでも無く、一人の自立した人間として男達一人一人を愛していたのだ。性別は違えど、僕は彼女に憧れた。これからも僕は出会い系で会った異性と関係を持ち続けるであろう。それでも彼女のように相手の一人一人を愛することは出来るであろうか。彼女の愛は正に活動であり、魂の力であった。このような逞しい愛を育むには、性欲の超越と卓越した人間性が必要である。僕は双方とも持ち合わせていなかった。有り体な恋愛を求めている僕にとって、アズサちゃんは恋愛の相手としてはふさわしく無かったが、尊敬すべき人物であり、彼女から異性への接し方を学ぼうと思った。最も僕程度の実力であれば、アズサちゃんのように何人もの異性から想いを寄せられることは無いであろうが、例え徒労に終わろうとも成熟した愛の術を身に着けたかったのである。
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