マゾッホとサド

「私SMプレイの相手を探してるんですけど、いかがですか?私がM側で調教して欲しいです。」


これは久々に大物が掛かったと思いプロフィールを見る。Fカップのロシア人ハーフの医大生と書いてある。トップ画像もややぽっちゃりとしているものの、申し分の無い容姿をした本人の写真が載せられていた。これは流石に釣りでは無いのか。そう思いつつも、僕の知的好奇心が彼女のメッセージを無視することを許さなかった。なんせ悲願のSMプレイである。僕は小学五年生から古今東西あらゆるジャンルのアダルトビデオを鑑賞してきているが、最も好きなジャンルは襟元から股の間まで一直線に伸びたファスナーがついたボンテージ服に身を包んだ女スパイが、敵組織に拘束され辱められてしまうというSMモノなのである。遂に念願のプレイに挑戦出来るかも知れない。そう思うと脳内でリスク管理を司っていた部位は瞬く間に効力を無くし、僕は彼女との好色に向けて一直線に走り始めた。僕の熱意が伝わったのか、話はトントン拍子で進み、次の日には彼女と会う算段になった。彼女は僕に事前課題として、SMのネット小説を数件送って来て、マゾヒストの気持ちを理解するために読んで欲しいと言った。マゾヒストに育成されるサディストという構図を『痴人の愛』に重ねながらも、僕は彼女の事前課題に加えて、『O嬢の物語』を再読し、翌朝に備えた。僕は勉強熱心なのである。

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