トキシング
コトプロス
第1話 もしもしカメよ
ふぅ〜、ちょろいちょろい
なんか世間が騒がしいみたいだけどさんざっぱらこの俺を押し込めて置いて、都合が悪くなれば自分達の為に利用しようとする。
だからサッサと抜け出して今の世の中がどうなってんのか、何か面白いモノが無いか見物してもバチは当たらないと思うのよ。
なんたってさっきまでバチに当たってたからねぇ。
しかし随分様変わりしたもんだ………あ〜やだやだ。アイツら追っかけて来やがった。
さて、とどこまで逃げ回れるかな
──────────────
「ありがとうございましたー」
客が出て行ったのでお礼を口にするが、頭の中じゃ今流行ってるアニメの次の展開を想像したり、プラモの工作でどこを弄るか考えている
ふと「こういう“ありがとうございました”って言うのも呪文の一種だよなぁ、自分は続かなくてエタるけど、こういう所から作家は話を膨らませるんやろなぁ」と呪術をモチーフにしたアニメを思い出しながらぼんやりレジから見える景色を眺める
誰も居ないからと気が緩んで(ここでいらっしゃいませって言ったらナニかが来て面白い事起こらないかなぁ)と中二病の自分が目を覚まし「いらっしゃいませー」と呟く
誰も居ないのに開く自動ドア、虚しく響き渡る入店のジングル、気づけば目の前にはぼんやりとした人影が立っていた。
(疲れて幻覚を見てるのか?霊系モンスターなら警報出るだろうし盛り塩と御札もあるは………)
「は?」
チラりと確認すると、カラーボールを置いてある奥の盛り塩と御札が黒ずんで行く所がちょうど見えた
「…………………………(叫ぶな、パニックになれば奴を刺激する事になる。何が目的か見極め………いやいっかもう)」
俺は疲れていたし、今の時代無くはない事なのでついに自分の番が来たかと半ば諦めた
「何かご注文があればお伺いしますが」
人影に注文を聞く、すると低い唸り声のような物を出しながら自分に近づこうとしている様子が見て取れた。
……?何故だ?御札も盛り塩もボロボロになっているのは確認した。そして目の前の怨霊?は様子見をしているのではなく、自分を呪い殺そうと近づこうとしている………?
ひょっとしたらまだここから入れる保険があるんですか?この怨霊が近づけないぐらいの“ナニか”がこの近くにある?!
「すいません商品確認をして来ますので少々お待ちを」
刺激しないようにできるだけ丁寧丁寧丁寧に歩いてバックヤードに入り裏口からコンビニを出る
「っっっはーーーっ!」
死ぬかと思った!一瞬もう無理かなって諦めかけたが、ホラゲーとかやってて良かった!でもアイツに圧を掛けてたナニかが近くにい「うぉわ!」
目の間のダストボックスの上に何かが丸くなって鎮座していた………カメ………か?ひょっとしてコイツが居るからアイツはアレ以上近寄って来なかった?
この際だ。悪いモノか良いモノかは分からないがコイツのおかげで助かったんだよな
俺はバックヤードに戻って期限切れのスルメを2袋持って来てカメに差し出す。
するとカメは頭にを出して来てムシャムシャとスルメを食い終わった後ふたたび頭を引っ込めてしまった。
とりあえずコイツが居れば怨霊は近寄って来ないみたいだけど、コイツ自身の得体が知れないからなぁ……まあ動物病院に持って行って見てもらった後はウチの子にしよう
たいしたモノの入って無いバッグをひっくり返してそこにカメをブチ込んで歩き出す。
おっとその前に警察に電話をしとかないと。
「もしもし?警察ですか?〇〇の角の△△コンビニに怨霊みたいなのが出たので対処をお願いします!」
電話中にふと気配を感じて飛び退くと先程まで自分の居たところに怨霊が居てこちらを睨みつけていた。
「警察は呼ばないと来ないからなぁ、かと言って個人的に反撃したらやり過ぎかどうかとか自己解決がどうとかうるさいし………まあ今回はカメが居るから逃げ切れ………え?」
後ろの怨霊から逃げようとすると前から更に3匹の怨霊、合計4匹になってこれがホントの四面楚歌かな?となる
「いくら謎のカメが居るからって逃げ切れる気がしないな……何か腹たって来た。どうせやられるなら一発殴り返しておきたいよな」
俺はバッグからカメを取り出して地面に置く
「いたっ」
カメが俺の指を浅く噛んでいた。もーせっかく逃がしてるんだから大人しくしててよね。
その間もジリジリと近寄って来ている怨霊
俺は普段身に付けていたお守りを握りしめ怨霊に殴りかかる!
思ったよりしっかりした手応え、だが一発当てて満足していたら反撃を食らう。咄嗟に怨霊を掴んで地面に叩きつける。
フッと手応えが無くなったのを確認してその体制から転がって横に避けると、自分が先程地面に叩きつけた所に別の怨霊が覆いかぶさっていた。
すかさず踵落としからのストンピングを行い、横から来た3匹目に左フックからの右ストレートをお見舞いする。
さあ4匹目!となった所で意識が朦朧として怨霊の攻撃を受けてしまった
「がっ………」
腕が裂けて血が流れる。だが、コレで怯んでなるものか!おのれよくも!と両腕で掴み掛かり怨霊を締め上げる
怨霊が力尽きてフッと消えると同時に俺は意識を手放してしまった………
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