第3話 翠と魔法使いと勇者
翠は、白銀色の翼で羽ばたいてることを自覚した。
もう少しで、地上だ。
地上には、二人の若い男が翠の事を見て驚いていた。
どうせ、この世界の事は何も知らぬ翠なのだ。(このまま人前に姿を現してしまおう)と思った。
地上にいたのは、この世界では魔法使いと呼ばれる人間と、訳あり勇者だった。二人は訳あって、今仲間から追放されている。
魔法使いは、まだ戻れる場所があったが、勇者は何処にも行くところがなかった。
魔法使いの名前をエリシス・ロイル。勇者は、アシュレイ・ロットと名付けられた。
空から、大きな白銀の翼を出して舞い降りてくるモノなど人外以外のモノに決まっている。
ただ、魔法使いが逃げずにその場で様子を見ていたのは、それが「魔族」に属するモノではなく、自分と同じ「光」に属するモノだと認識したためだ。
若い二人の男が、翠を誘導するように手を振っててくれる。
翠は、大分安心した。
▲▽▲
「ボクは、
「女神? イグニス女神の事ですか?」
魔法使いは、どことなく女神に似ていた。
女神と同じ銀色の髪と瞳だ。色白で彫刻の様に美しい所まで。
魔法使いの後ろにいた青年は、変わったキジトラ色の髪の色をしていてその年に似合わずオドオドしていた。
翠は。頷いて魔法使いに近付いた。
「ワタシは、魔法使いの一族、エリシス・ロイル。こちらは、私が召喚した勇者、アシュレイ・ロットです」
「本当に違う世界なんだなぁ、魔法使いとか勇者なんて! ゲームの中しか存在しないものかと思ってたよ」
翠は、随分打ち解けて、エリシスに近付いたが、エリシスは、逆に後ずさりしている。
その訳が分からない翠。
「どうしたの?」
「その羽は……人間ではないのでしょう?多分竜族ですね?」
「うん、頑丈なモノにしてくれって言ったからね……」
エリシスは、フゥと大きく息をついた。
「この世界に、不慣れなのは本当のようですね……なんで私のところばかりこんなのが集まってしまうのでしょうか……ああ、神よ、お恨みします同じ眷属でありながら、ワタシにばかり試練を与えるとは……!!」
エリシスは、東の方向を見てひざまずいて叫んでいた。
翠は、何をしているか分からなかったが、エリシスの後ろに隠れていた勇者の顔を見て、不思議な既視感を覚えた。
「お、お……オレはゆ、勇者なんて大層なものじゃなんだ……何も出来なくて……その……」
(怯えてるのか?)
翠は、内股になって震えてるアシュレイ・ロットを見て思った。
「その羽をしまって欲しいものです。勇者殿もまだこの世界には、慣れていらっしゃらないのだから」
(どういう意味だよ?)
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