夢百夜
大沢敦彦
第1夜 再会
電車から降りると、親友は私を残して先にいってしまった。荷物が多いのに薄情な奴だと思った。こちらは両手いっぱいに持っているというのに、あいつは手ぶらでどんどん先にいってしまって、ほどなく姿が見えなくなった。駅構内は人の往来が激しくて、声をかけても届かなかった。
彼を探しているうちに、どこかの学校の敷地内に入っていた。中庭に立ち入ると、さすがにまずいと思って引き返した。すると、左右の校舎から男子生徒の笑い声が聞こえてきた。私はかまわず、そこをあとにした。
プールサイドを歩いていると、ぽんぽんとむやみやたらに人が飛んでいるのが目に入った。どうやらプールサイドの向かい側にトランポリンが置かれてあって、スクール水着を着た女子たちが空高く舞い上がったかと思うとそのままプールに飛び込んでいた。
学校を離れて狭い路地に入ると、汚い身なりの男たちがいき交う場所で、すれ違うのもやっとのところを早く出ようと出口に差しかかったそのとき、
「あんた、地獄で会ったね」
出口から路地に入ってきた知らない男が、私にそういって話しかけた。
「あれ、あなたあのときの?」
男から話しかけられ、その顔をふと見ると、どうも以前みた夢の中の地獄で会ったような気がする。こんなところで再会するとは、なんて奇遇なんだろうと私は思っていた。
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