第25話 聖女様と二人きりの勉強会
相坂との邂逅から数日後。
「晴哉くん。テスト何点だった?」
俺達のクラスでは小テストが実施されていた。
今回の小テストで俺は優斗と、勝った方が負けた方に
「その前に、俺が勝った時の要求を先に伝えておく。俺が勝ったら、優斗に焼き肉食べ放題を奢ってもらう」
「え、えぇ!? 僕、今月結構ピンチなんだけど……」
「ダメだ」
勝負に情けは無用なのだ。
「じゃあ、まずは俺から。俺は78点だった」
クラス平均は70点。
そして、優斗の成績はいつも平均よりもかなり低い。
よってこの勝負は……俺の勝ちだ。
そう思っていたのだが……
「やった! 僕、80点だったから僕の勝ちだ!」
「えっ!? な、何でそんなに高いんだ?」
「えっとそれはね、雫に勉強を教えてもらったからだよ」
……完全に失念していた。
そうだ、今の優斗にはストーリーにはいなかった成績優秀で献身的な……彼女がいるのだ。
賭けの内容を聞いた藤宮が、絶対に優斗を負けさせない為に誠心誠意勉強を教えている光景が容易に目に浮かぶ。
藤宮は俺が勝った時、優斗に何を要求すると考えていたのやら……
その後、優斗から焼き肉食べ放題を要求された。
俺も今月結構ピンチなのだが、さっきの俺と同じように優斗にダメと一蹴されてしまうのだった。
「はぁ……」
「晴哉君。大丈夫ですか?」
落ち込んでいると、沙紀が心配そうに声を掛ける。
「ちょっと落ち込んでるだけだから、心配しなくても大丈夫だ」
「もしかして、テストの結果が思わしくなかったのですか?」
そういうわけじゃないよ、と言おうとした寸前、沙紀からこんな提案をされる。
「でしたら、私と一緒に勉強会をしませんか?」
「えっ」
予想外だったので驚いてしまったが、よくよく考えてみるとありがたい提案だ。
沙紀は玲奈と並んで学年トップの成績を誇る優等生。
そんな沙紀に勉強を教えてもらえるのだから、断る理由なんて無い。
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらってもいいか?」
「はい。それじゃあ、放課後に図書館でやりましょう」
「分かった。楽しみにしてる」
「私もです」
満面の笑みでそう言って、沙紀は自分の席への戻って行く。
心なしか、沙紀の足取りが軽いように見えた。
——放課後。
「それじゃあ、晴哉君。行きましょう」
俺達は図書館へと向かう。
「あ、どこも空いていませんね」
中間試験が近い事もあって、図書館の中は勉強している生徒で満席だった。
「仕方ないけど、他の場所でやるしかないな」
「そうですね……晴哉君。もし良かったら……」
そして沙紀は、少し恥じらいながらこう言うのだった。
「わ、私の家で勉強しませんか?」
「えっ……」
沙紀の家…………マジ?
「ほ、本当に良いのか?」
「は、はい。は、晴哉君なら大丈夫です」
俺……沙紀にすごい信頼されてるな。
「わ、分かった。それじゃあ、お邪魔します」
「は、はい」
こうして、勉強会の会場が沙紀の家へと変更された。
俺達は学校を出て、沙紀の家へ向かう。
それから歩くこと20分弱、高級そうなマンションの前に着く。
「このマンションです」
勿論知っていた。
沙紀の家は実は結構裕福なのだ。
「ふぅ……」
ストーリーでは何度も見た事があるけど、実際に足を運ぶとめっちゃ緊張する。
前に玲奈の家にお邪魔した時もそうだった。
「沙紀。今は家にお母さんがいるのか?」
「いえ、今は誰もいません」
「えっ」
聞けば沙紀の父は仕事、母は用事で二人とも今は留守にしているとのこと。
つまり……沙紀と二人っきり。
勿論、変な事をするつもりは毛頭無いが……ちょっと警戒心が緩いのではと心配になる。
まぁ、沙紀は俺は大丈夫だと言っていたので、他の人を家に招くのは親がいる時にするはず。
「お、お邪魔します」
沙紀に招かれて、家の中へと入る。
中は掃除が行き届いていて、とても綺麗だった。
「おぉ……」
外の眺めを見て感嘆の声が漏れる。
ここからの眺めは絶景の一言に尽きる。
もっとこの光景を目に焼き付けたいところだったが、ここに来たのには勉強会という立派な目的がある。
「沙紀。早速勉強会を始めよう」
「分かりました。では、晴哉くん。私の部屋に行きましょう」
「えっ、沙紀の部屋?」
てっきりリビングで勉強するのかと思っていた。
それから沙紀の部屋へと案内される。
如何にも女の子の部屋って感じの内装だった。
ベットには可愛らしい犬のぬいぐるみも置いてある。
「は、晴哉くん。あまり見られると、その……は、恥ずかしいです」
「ご、ごめん」
完全に無意識だった。
沙紀の顔が真っ赤になっている。
「で、では始めましょうか」
「そ、そうだな」
早速勉強会がスタートする。
沙紀は俺の隣に座る。
「晴哉くん。分からないところがあれば、何でも聞いてくださいね」
「それじゃあ、早速分からない問題があるんだけど……」
「どの問題ですか?」
「えっと、このもん——っ!?」
その瞬間、むにゅっと柔らかい何かが俺の腕に触れた。
視線を斜め下へ落とせば——沙紀の豊満な膨らみが腕に当たっているではないか。
沙紀はその事に気づいていない。
「さ、沙紀。あ、あの……」
「むぅ。晴哉君、ちゃんと集中して聞いてください」
誰のせいだ、誰の!
果たして俺はこの先集中して勉強に臨めるのかと、幸先が不安になるのだった。
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