刑事の子
具流 覺
1頁 戸籍謄本
昭和26年(秋)。
午後の役場である。
秋霖(シユウリン)が紅葉(モミジ)を濡らす。
役場の受付(戸籍係り)に「赤ん坊」を抱いた『石原道子』が立って居る。
係りの職員が「戸籍謄本」の写しを持って来る。
「お待たせしました。ちょっとご確認下さい」
道子は謄本を見る。
『養子・沢村 繁から石原 繁』
「・・・間違い有りません」
職員を見て笑う赤ん坊。
「可愛いお子さんですね」
道子は『繁(シゲル)』の顔を見て嬉しそう。
「ヨシヨシ、バー。今日から私がアナタの母さんだよ」
憲司(道子の夫・刑事)が待合室の長椅子を立つ。
役場玄関。
雨空を睨み傘を開く憲司。
憲司の持つ傘が三人を包む。
憲司は道子を見て、
「無事に終わったな」
道子は少し俯き、
「ヒロ(沢村弘子・シゲルの実母)ちゃん可哀想だった」
憲司は気丈に、
「仕方がねえよ。旦那があんな事故で亡くなっちゃったんだ。女手一つで役所の給料じゃ養えきれねえ。それにヒロちゃんだってまだ若けえんだ。再婚する時、子持ちじゃなぁ」
つづく
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