第2話.死の感覚…

ものすごい耳鳴りと共に鋭く耳が裂けるような金切り声があたりを支配してしまう

他の生徒はものすごい声量で騒いでいる中、先生が活を入れることとなる


「一旦静かにしなさい。私は状況を見てくるから少し待っててくださいね」


普通に考えたら異常事態なのだが、先生も焦っていたのか教室から出ていこうとする

先生は他の教師と共に何が起こっているのかについての現状把握をしたかったのだろう

だがしかし、そのように上手くはいかないのである

同時刻…

生徒全員が着席はしたものの、今の音は何だったのかというように原因を探るようにしてコソコソ会話を全員が始める。


「おいおい、今のなんだよ」

「これ本当にやばいんじゃね?」

「皆逃げようよ怖くね…」

「・・・」


ほとんどの人間が教室内で起こった状況に対して恐怖と焦りといった感情をもたらしてしまう。

当然な状況である。

なぜなら、人間という生き物は皆平穏な人生を送ってきたのだ。そんな中急に経験の一つもない奴らが冷静を保てというのは無理があるのだ。

仮に冷静になれる人がいたとしても、この事象が起こることをすでに知っている者だけになるだろう。

俺も皆と同じく何が何だか情報の理解が追い付かなかった・・・

その後はというと、下からだと思うがジリリリリ、ジリリリと火災報知器の音が鳴り始め状況が悪化したようにも思えるこの場所から逃げたくなる

だが、我慢する。このまま下手の行動をしたら皆に迷惑をかけてしまう恐れがあるからだ

だから、目を瞑り自分の感情を抑え待つ

そんな中俺の心とは真反対の感情、言葉が教室を震撼させる


「僕は先に外へ出るから」


と、言うようにして身勝手に教室を出て行ってしまったものもいる

だがしかし引き留めるほどの余裕がある人はいなく勝手に行ってしまう

それに続き、何名も外へ出ようとするが、

瞬時何かすら全く分からない原因不明の暴風があたりを支配しカーテンが引きちぎられる。

その、暴風は物を簡単に飛ばすような物凄い威力を持ち、俺は自身の体が飛ばされないように床にしがみつくことしかできなかった。

そして、他の者はどうなっているかというと…

その暴風の影響を先生はもろに受けてしまい倒れてしまう。

その暴風の影響によりあたりの机や荷物が廊下の方へ飛ばされる。

その暴風の影響により机の角が頭に当たり血を流すもの、机と顔面衝突をし、気絶するもの。様々の要因によりクラスメイトが倒れていってしまう。

数十秒経った現在の状況は暴風がやみ教室中の物がなくなり見知った顔の奴らが倒れている。

その教室中はまさに一言「絶望的」その言葉でしか表せれない様なむごい状態にあった。

俺が見るに幸いクラスメイト全員が死に至ることはないと思えたが、ほとんどの人間が重症のようだった。


(この風何なんだよ?ふざけんなよ)


俺はその暴風の元を辿るようにして教室の窓からその原因を見ようとする。

だって、何が俺の同級生をこんな目に合わせたのか…

そんな憤怒の感情により外を見てしまう

分かっていた超常現象のようなものだって

だけど、そんな物信じられなかったのに、だから外を見たのに

そこには学校の校舎の2倍よりも大きいと思われる化け物の後ろ姿が見えてしまった。

俺は絶望感と恐怖感に苛まれる事となり体が全くと言って動かなくなってしまう。

気づいたことがあるとすれば・・・俺は金縛り状態であることだ。

一つ良いことがあるとすれば、暴風によって血を流している者はいるが全員が自分の足の力で立てるといったような状態である事だ

その事象に対して安堵感を保つが金縛りが止まらない

全員が何とか無事だと気付いたはいいものの俺は感覚から察知してしまった


(逃げなければいけない。何が起こっているかわからないがとにかく逃げなければ死ぬ)


目の前がぐしゃぐしゃになる。意味が分からない

何故目の前がぐしゃぐしゃになっているのかすら分からない

自分の感情が今一体どういう物かすらも疑問に思える程には精神が不安定になっている


(あぁ…あぁそうか、俺は泣いているんだ)

(ん?なぜだ)

(わからない…なんで俺は泣いているんだ・・・)


そんな感情を持ちながらも先生の事を見る

先生もその巨人を見たのだろう。だが、先生も怖いだろうにはっきりとした力強い声で生徒に対して指示をし続けていた。

そんな先生の責任に対して深く感動をしてしまう


「前習えをした状態で出席番号順に並んでて!」


先生が必至に指示をする中でも俺は何故か泣いている

だけど、そんな責任感で頑張って動いている先生を見て勇気を振り絞り前に進みたくなった

俺自身、なぜ泣いているかすら理由が全くと言うほど分からなかったが、ゆっくりと落ち着いた一歩を確実に踏み抜いていく

ただただ、勝手に涙が目からは零れ落ちているが、幸いなことに体の硬直という物は完全に治りきっていた

雅出雲と目が交錯する。

俺はその瞬間虚勢を張ろうとしてしまった。

だって、カッコ悪いところを好きな人に見せたくないから

だから、俺自身涙を服で無理やりぬぐい胸を張り歩く

だんだん歩を進め先生の方へ近づく


「雅!並ぼう。行くぞ」

「え、うん」


全員の安全を見る余裕何ってもの先生にも俺自身にも誰にも無かった。

だけど出雲だけには絶対に生きててほしいから声をかける

俺は出席番号順的に一番前という事もあり先生の真隣で先頭に立ち、クラスメイトと共に教室内並ぶ。

俺らの教室は別棟の3階にあるため、階段は一つしかなく逆に言えば一階にさえ行けば柵を超え外へ出ることができるのだ。

それが、幸運に転ぶか悪く転ぶかは分からないがどっちにせよ必死に足掻いていくしかないのは確かだ

俺は先生の指示に速さに対して流石の物だなと感じながらも教室を出て廊下を横断するようにして進む

瞬時感じる違和感。

なんだ、この違和感は…


「なぁ天満…気づいてるか」


急に声をかけて来た男は康太だった。

何に対して言っているのかは分からない。だが、康太の必至そうな苦虫をつぶすような顔を見た瞬間なにかがあると早急に察知する。

一体何なのだろうか…それを聞こうとした瞬間


「一列に並べよ!」


若干怒り気味の生徒が彼に対して強く言い後ろの方へ戻っていく。

その生徒は直ぐにでも逃げたいのか並んでいない康太に怒りの感情を投げたのだろう

だが、そんな他生徒の事を考えている暇もなく康太の一言によって俺の感じてる違和感っていうものがはっきりと理解できるようになった気がした。

この違和感は何か絶対的に大切なものだ

気づいているが、その絶対的に大切なものという何かが分からない

だけど、あと少しで何かが分かる。そうあと少しなのだ。考えるピースを探せ…何があった?考えろ。

この、壮大な事件が起きた。その最初の瞬間から考えろ…


(音…そうか、音だ)

(俺たちは勘違いしている…いや、他の事に対してとらわれすぎて忘れてただけだ)

(そうか、窓から見た巨人にとらわれすぎていて、初めの音を忘れてたんだ…はじめ…人間には出せないような叫び声、その次に消火器…)

(うん?待てよ?消火器はどこから鳴っていた?あ‥あ…下だ…)


全身の鳥肌が立つ。このまま皆で階段を降りると…


「死ぬ…あ、あぁ…」


だが、その情報を知ってもなおクラスメイトに押されるがまま階段を下がろうとしてしまう

その情報を伝えられない。知ってしまったのに体が硬直して鳥肌が立って喋れない

大切なの事なのに

嫌な気配があたりを漂う。俺の視界からは色が消え褪せ何も感じなくなる

そして、その嫌な予感、嫌な感覚は当たっていた。

二階には人間の形を模した化け物がいる

階段の隙間からその化け物と目と目が交錯してしまう

瞬間、その化け物は狂ったかのようにして耳が壊れるくらいの勢いで発狂しまくった


「ギャァァァアア」


俺は色褪せた世界で見てしまう。そう、倒れている生徒…倒れてる知り合い…

恐怖で足がガタガタと震えてしまう。何も話すことができないままゆっくりと階段を上がろうとする。

俺だけはその化け物を見てしまい…動けなくなってしまった。

いいや、俺だけじゃない隣にいた先生も動けなくなっているのだろう。

恐怖で動かないのだ。

かすれた声で俺は後ろにいる男に向かって必死に伝えようとする。


「上がれ…いる」

「はぁ何ばかいってんだよ」

「そうだそうだ!」


そんな相手の言い分も無視して…俺は言う


「いる…いるんだよ。」


声が震える

何が何って言えない。だってその何かは不気味で俺は見ないふりをしたかったから

ゆっくりと俺は階段を上がろうとする。後ろへ…

その化け物の特徴としては直立姿勢。

下半身が蜘蛛のように複雑につながっている。

腕の数も阿修羅のように多く存在している。

そして顔は女のようであり、ただし、目が一つしかなく口が裂けている。

想像するとしたら、下半身蜘蛛に上半身阿修羅を持ち合わせた切り裂き女だ。

奴は上がっては来ない。

のっそりとゆっくりこっちへ向かってきていることを見るに足は速くなさそうなのだ

俺はそのまま「死」の恐怖を感じてしまいそのまま上へあがろうとしたが、後ろに居た一人の生徒はそれに納得しなかったのか、俺を抜かし勢いよく1階へ行こうとしていた。

幸いなことに階段と化け物との距離約10メートル以上はある。

それに加えあの速度ならば彼だけでも外へ出れるだろう…

そんな甘い考えを天満はしていたのだが、あの化け物は下へ行こうとする男を見逃さなかった。

予想外の攻撃方法…

何が起こったかというと、男が下へ行こうとした瞬間化け物の細い腕の一本が「ゴキゴキ」という音を鳴らし折れ曲がった腕を物凄い勢いでこちらまで伸ばし、一階まで下ろうとした男の足を片手で化け物が掴むこととなる。

そのまま、その化け物は首を右に傾け笑う。

手でつかんだ男を引きずり化け物の足元まで連れ去られその道中つかまれた男は必死にこっちを見ながらも叫んでいた。


「助けてくれ!頼む…頼む」


壮絶的で尚且つ絶望的な声に俺は目を背けてしまう。

その化け物と男を見てはいけない。そう俺は思い振り返ってしまう。

彼らに背を向けてしまう。そして下を向いてしまう。俺は床を見ている震える手で顔を覆いたくなる。

そんな姿を見て彼は俺に対して

いや俺たちに対して絶望したかのように消沈しながら言う


「お前…は?何?え?お前も?」


そう絶望した声で言いながら「グチャ」という音と共に彼の声は消失してしまった

色褪せた世界で、血がはじけ飛ぶ。白色の液体があたりへ飛ぶ

そのとんだ液体は俺の足元へまで飛んでくる

その液体の色がだんだんと赤黒い色に見えてきてしまう

その液体に対して目を伏せてしまう

俺は自我を保つためにも彼の自業自得だと自分自身に言い聞かせ、彼を見ないようにする


(裏切ったといえばそうなのかもしれないけど彼の自業自得)

(きっとそうだ…きっとそうなんだ)


俺は何も見ていなかった。

俺は何も知らない、俺はあの男がどうなったのかも全く知らない。

そんな俺は卑怯者かもしれないが、それできっとよかったんだ・・・

そういえばだが、俺と同様に前線にいた先生は一体どうしてるんだ

顔を横に傾け先生の顔を見る

先生も彼を裏切っていたのである。

正直に言ってしまえば俺と同じことを行っている仲間がいるだけで精神が安定できるのだ。性格は悪いかもしれないが、そんな先生を見てしまい歓喜してしまった。

先生も多分だが相当精神に来ていたからこそ、俺と同様に背を向けたのだろう。

そして、先生はゴミを食べるようなひどい顔をしており疲れ切っていた。

他のクラスメイトは今の悲鳴を聞き何かヤバいことがあったのだと察し三階のほうに後ずさりしてしまっていた。

俺は急いで途中にいたクラスメイトを押し抜き3階に戻り、俺は教室の窓から教室内へ飛び込んだ。

その後急いで窓側の方へ行き恐怖感に押しつぶされそうになっている俺自身の精神を安定させるためにも一時的に深呼吸を何回も行った。


「はぁはぁはぁ…」


片手を上へ掲げる自分の姿…

真っ暗の空間であおむけにゆっくりと落ちていく自分の姿…

俺は今一体何を見ているんだ?

これは、死んだのか?

そんな疑問を吐露してしまう。

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