第2章「出世(しゅつぜ)」
第4話 あなたの体
つまり、このカミサマは自分の「仕事」を今回は僕に押し付けようとしている、そういうことだろう。
「ん? まてよ? 今の話、オーダもそうだったってことだよね?」
「そうだった、って?」
「あ、いや、オーダも世界を破滅に導き新たな創生を行うためにあんな恐ろしい行動をとったって話――」
「ああ、そういうこと? そうね、あの世界もなかなかに楽しかったわ、イエヤーや「猿」、ミッチー、ショーグン――。みんな必死に考えて生きてた。ああ、ちなみにあのあとなんだけど、ミッチーは「猿」に討たれるわよ? あなたももう居ないしね。そのあと、猿が世界征服をおおかた成し遂げるけど、それもイエヤーに奪われることになるわ」
「そう、なんだ――。でも、戦争はおわるんだろ? 平穏が訪れるって、そう言ってたよね?」
「そうね。イエヤーに政権が移ってから数百年は安寧が続くでしょう」
サルーが「猿」になってるのは気になるが――。
レグナスはふっと表情を緩めた。
なんにしても、あと数年で戦争が終わるんだ。なら、自分が生きた戦乱も無駄ではなかったのかもしれない。
「あら、嬉しそうね?」
「え? ああ、戦争は――辛いことが多すぎるからね。無くなるならその方がいいに決まってる」
「やっぱり――思った通りだったわ。あなたを連れてきてよかった。当代一の剣士レグナス・レブナント。あなたならそう言うだろうと思ってたわ」
「――いっぱい、いろんなものを失ったからね……。あんな思いをする必要がなくなるんなら、それに越したことはないよ。――って、そもそもなんで「僕」なのさ!?」
そうだ、どうして「僕」なのだ?
レグナスはどうも
僕は一介の剣士だ。軍団長でも将軍でも王でもない。これからこの世界に破滅と創生をもたらすなどという大役なら、もっとふさわしい人材はあの世界には居たはずだ。
「居心地が良かったから、かな?」
「居心地?」
「うん、あなたの体、とても居心地がいいのよね」
「え――?」
「ああ、その手甲だけど、戦闘態勢時にはそんな形してるけど、平時は消えて、腕に紋章が現れるだけになるから、お風呂とか、寝るときとかは邪魔にならないから安心してね」
「ふうん――」
「それから、その紋章が「私」だから、無理に消したりしようとすると、腕を腐らせるから、諦めてね」
「紋章が私? つまり、僕の腕に
「そう言ったでしょ? 居心地がいいって――。あ、そろそろ時間がないわよ? じゃあ、頑張って、レグナス」
「時間? ――って、なんか嫌な予感――。さっきちょっと引っ掛かること言ったよな? 『戦闘態勢時には』って、おいまさか――!?」
レグナスの周囲に不穏な気配が複数忍び寄っているのが分かった。
動物――? 人間――?
そいつらはレグナスをぐるりと取り囲んでいるようだ。
森の木々ががさがさと揺れている。
レグナスは剣の柄に手をかけた――。
次の瞬間、そいつらが姿を現した――。
緑色の肌、異様にでかい鼻と猫のような黄色い眼。上半身は裸で腰には布を巻いている。足は裸足で、手には棍棒やら手斧、短剣などを持っている。
――子供?
身長から見て、子供のように見えなくもないが、明らかに人間ではないとはっきりわかる。
ぎゃぎゃぎゃ――!!
気味の悪い「声」をそのうちのどれかが発すると、その「緑の子供たち」は一気にレグナスへと襲い掛かって来た――。
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