第22話 朝の2人きりの時間
朝になって目覚ましの音で目が覚め、とりあえず俺は自分の体調を確認した。手足はいつも通り動かせるかとか、気だるさは無いかとか、そういうのを確認したが特に問題は無く、熱も測ったがいつも通り。
「よし、大丈夫だ」
ベッドから起き上がって宇佐美の部屋をノックするが、特に反応は無い。
「宇佐美〜ドア開けるぞ〜?」
そう言いながらゆっくりドアを開けて様子を確認すると、宇佐美はまだ寝ている様だった。
ドアから覗き込むだけで終わり、すぐに熱さまシートや、昼食があるか確認する。昨日宇佐美の母親が色々買ってきてくれたおかげで、色んな物があるのでお昼は大丈夫だろう。
「朝飯どうしよ…たまにはコンビニでなんか買うか」
たまには早めに学校に行くのも良いと思い、すぐにシャワーを浴びたり身だしなみを整えたりして、いつもより30分程早く、家を出る準備を終わらせる。
念の為最後に宇佐美の様子を確認して、まだ寝ていたので大丈夫そうだと判断して家を出る。
電車内は通勤の人達でいつもより少し人が多かったが、高校の最寄り駅に着くと一気に人が少なくなる。
(なんか…良いな)
私服やスーツの人達が歩く駅前は、いつもの制服を着た生徒が多い駅前と比べると、非日常感がある。
夏が近づいているので少し蒸し暑いが、すぐにエアコンが効いたコンビニに入ってメロンパンとお茶を買い、途中の高校までの経路にある公園のベンチに座って朝ご飯を食べる。
外は少しカリッとしていて、中はふんわりとした食感。パンの香りが口の中に広がって、上にまぶしてある砂糖がたまにガリッと甘い味を出し、アクセントになってとても美味しい。
少し乾いた口の中をお茶を流し込んで潤して、またメロンパンを頬張る。気づけばすぐに食べ終わってしまった。朝飯を済ませて学校に入ると、既に部活の朝練で来ている人達が何人か居て、放課後とはまた違った雰囲気がある。
8時になるより前に教室に入るのは初めてだったが、入ってみると1人だけ既に席に座って居た。黒と茶色の髪が混ざったセミロングの女子。
「橘か…朝早いな」
「え!?梅…!?どうしたの早いね…」
「なんか、たまには朝早く来んのも良いかなって」
「なんか梅がこんな早く来るの意外かも」
「まーそれはそうかもな…中学の時は遅刻ばっかしてたし」
「ふふ、それはなんか分かるかも、想像出来る」
2人で居るには広い教室で、俺は自分の席に荷物を置いたらすぐに橘の前の席に向かう。逆向きで椅子に座って、背もたれの上に腕を置き、橘の机に置いてある物を確認する。
「勉強してるんだ」
「そう!!テスト結構近いから」
「あっ…確かに…そういやテストあんのか」
「一応確認なんだけど、私が勉強教えるのって今週だっけ?」
「あ〜ごめん、今週は一応止めといた方が良いかも」
俺がそう伝えると橘は頭に?マークを浮かべる。
「…?なんで?」
「家に居るやつが風邪引いてさ、明日とかには俺も風邪貰うかもしれないから」
(あ…やべ…)
俺はそう言っている途中で気づいてしまった。俺と宇佐美は同じ学校でクラスは違うとは言え、家族が風邪を引いたと言ってしまえば、同じタイミングで風邪で休んでいる宇佐美という情報が橘の中で点と点で繋がってしまうのでは無いかと…
「あ〜そっか…今は体調大丈夫?」
「大丈夫!ちゃんと熱も測ってきたけど平熱だったし」
「良かった、体調悪くなったらちゃんと言いなよ?」
「分かってる、流石に橘に風邪うつすのは申し訳なさやばそうだし」
「ふふ、何それ」
やはり橘は優しくて少し頼ってしまいそうになる。宇佐美との事で本当にやばいと感じた時は、橘に頼るのもありだなと感じた。
「じゃあ教えて貰うの来週で良い?」
「うん、良いよ。来週ならテスト前で部活無いし、テストも近いから私も良い感じに教えれるかも」
「そういえば、橘はなんでこんな早く来てたの?」
「私はテスト勉強しときたかったから」
「ほへ〜家でやんないの?」
「ん〜…家だとなんか集中出来なくて」
「あ〜わかるわ、なんか誘惑多いよね?」
「そう!!だからそれなら教室の方が良いかなって」
「あ…てかそれなら俺邪魔じゃん…ごめんな」
「…!良いの良いの、気にしなくて。こういう時じゃないと梅と会って2人きりで話すの中々無いと思うし。私は今の方が優先度高いよ」
「そっか、なんか…ありがと」
橘が勉強よりも俺と話す事を優先する反応をしてくれて、とても嬉しくなる。そして俺は、出来るだけ橘の勉強の邪魔をしないよう、ノートに書かれる字を見ながら2人きりの教室で時間を過ごした。
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