魔王城の内見
零二89号
魔王の引っ越し
ここは魔界、人ならざる魔の力を持った生物達が住まう場所。そこに、魔王と呼ばれる男がいた。
「魔王さま……一つご報告があります」
「どうしたセバスよ」
セバス、魔王が信頼する優秀な側近の一人である。
「その……率直に申しますとですね」
「早く言わんか」
「最近部下が増えすぎた結果魔王城が溢れかえっています」
「何?」
「最近、ダークドラゴンと戦争したことは覚えておいででしょうか?」
「ああ、我が勝って、奴の手下の半分が我の部下になったやつか」
「その部下が多すぎた結果、魔王城の部屋や居住棟などが足りなくなっています」
「ふーむ、よし引っ越すか!」
魔王は即断即決を好んでいた。
「引っ越すと言いましても、どこに?」
「安心しろ、それに関してはツテがある」
そう言うと、魔王はセバスを連れてとある不動産会社を訪れた。
「ここは……」
「
会社だ。」
「この会社に依頼して新居を探すと?」
「ああそうだ、この会社は元々親父の友人が創立した会社だからな、信用できる」
魔王とセバスは早速中に入った。
魔王は店員と会話を交わす。
「魔王城に引っ越したいんだが……」
「魔王城ですね、ちなみに何かご条件はありますでしょうか?」
「とにかく広い、1000人が余裕で入るような魔王城を探してくれ、あと出来れば
勇者対策と侵入者対策で罠とかあると尚いい」
「分かりました、何せ魔王城ですので、候補を出すのに数日掛かりますがよろしい
でしょうか?」
「ああ、構わない、よろしく頼む」
(魔王が不動産来てる事には驚かないんだな……)
そう思いつつも、口には出さないセバスであった。
ー数日後ー
魔流魔流不動産にて――――
「それで、候補は見つかったのか?」
「はい、3件程見つかりました」
魔王の問いに店員は笑顔で答える。
「それで、その3件は?」
「そちらについては私ではなく――――」
そう言うと店員はとある魔族の男を紹介する。
「どうも、ハルミ・ネフェイルです、魔王城の案内を務めさせて頂きます」
「彼は住宅の専門家でもあるので、必要があれば彼を頼ってください」
「分かった、それじゃあな」
そうして魔王とセバス、そしてハルミの三人は店を後にする。
◆◇◆◇◆◇
「こちらが一つ目の魔王城でございます」
「おーここが、って……」
「魔王さま?」
突然黙った魔王にセバスが近寄る。
「じいちゃん
魔王が叫んだ。
「その通り、この魔王城かつて先々代の魔王さまが住まわれていた場所です」
ハルミはそう言うと、門を開いて2人を魔王城の中へ案内した。
「この城は広いのもそうなんですが、罠が魔王城の中でも最多の数なんです」
「じいちゃん、疑り深かったからなあ」
(しっかし、本当に罠が多いなこの魔王城)
セバスがそう思うのも無理はない。なぜなら入ってから10分経ったが、その時点で既に20個の罠を見ている。
刺激を受ける床が開けて下に大量の棘が現れたり、住人以外がセンサーに触れると割れて破片を飛ばして來る窓、股間に高速で体当たり?をかます二本角の頭蓋骨、鎖で壁に繋がれている紫色の右腕と左腕等々、罠は多岐にわたった。
数分後、三人は先々代魔王の肖像画を発見する。
紫色の肌、立派な二本の角、凛々しい顔立ちの先々代魔王が描かれていた。
「凄いですね、先々代魔王様が死去されてから100年は経っているというのに全然
古びていない」
セバスは肖像画がまだ書かれたばかりのような状態であることに関心する。
「我々不動産の関連企業が掃除しているというのもありますが、一番は素材でしょうね」
「素材?」
セバスはハルミの言葉に疑問を持つ。
「この額縁と紙は、特殊なものでできていましてね、後50年はこの状態のままで
あると言われています」
「そんなんがあるんなら俺も欲しいな」
魔王はその特殊な素材に興味を示す。
「すみません、私素材については特殊なものであるということしか知らないので、
それに関してはお助けできません」
「ああ、いや別にいいさ、先に進もう」
魔王は2人に進むよう促した。
そうして20分後、三人は最初の魔王城の内見を終えた。
「お気に召して頂けたでしょうか?」
ハルミが魔王に問う。
「ああ、広いし罠も多い、これは中々の優良物件だ、けどまあせっかくだし残りの
二つも見るkとにするよ」
「分かりました、それでは次の魔王城に案内させて頂きます」
ハルミは二つ目の魔王城へ2人を案内した。
「ここは……」
「先代魔王様が住まわれていた城です」
「へえ」
魔王は先々代魔王の時とは違い初めて見る様な反応した。
「魔王様はご存知なかったんですか?」
ハルミが問う。
「ああ、親父は俺が小せえ頃に死んで、その後母さんと今住んでるとこに移ったから、親父についてはあんま知らねーんだよ」
魔王が話終えると、三人は城の中に入った。
ー20分後ー
「肖像画多いな……」
魔王が呟いた。
「先代魔王様は所謂ナルシストでしたからね」
ハルミが言った。
先代魔王の肖像画はバラバラの絵柄で書かれていたが、全部が特徴をちゃんと捉えていた。
青い肌、黒と黄色の目、立派な一本角、そして整った顔立ち。
「先代魔王様は妾が100人いたという噂です、実際に何人いたかは知りませんが」
「とんでもねー野郎だったんだな俺の親父」
そうして2件目の魔王城の内見は終わった。
だが、3件目の内見中心、事件は起きた。
ー数時間後ー
「何故だ……ハルミ!!!」
魔王は血を吐き地に伏せながらハルミに問う。
「何って、あんたを殺すためだよ」
「何故……」
「おいおい、魔王は魔界の王、その座が欲しい奴は掃いて捨てるほどいる、その内の一人が俺だったってだけさ」
「ぐおおお!!」
魔王は拳を繰り出す。
「無理無理、俺が今張ってる結界は魔王とその眷属のあらゆる力をゼロにする、そんなん当たらねーよ」
ハルミはそれを軽々とよける。
「さよなら」
ハルミは魔王の頭目掛けてかかと落としを繰り出す。
が、セバスがギリギリの所で食い止める。
「その汚らしい足で、魔王に触るな……!!」
「おお、おお、怖い怖い」
が、ハルミはすぐさまセバスの顔面目掛けて蹴りを入れる。
「がはっ!?」
セバスはそのまま遠くへ吹っ飛んだ。
「貴様あ!!!」
魔王が立ち上がろうとする。
「だから無理だって」
ハルミは魔王の
「しっかし魔王ってのはなんでこう生命力が半端ないんかね~、お陰で毎回
「毎回……?」
「冥途の土産に教えてやるよ、お前の親父とじじい殺したの、俺」
そう言ってハルミは自分を指さす。
「なっ……!?」
「まあそんな訳でとっと死んでくれや」
するとハルミは古びた白に火を放つ。
「じゃあなー」
ハルミは火を放った後その場を去った。
「おのれえ、ハルミぃ!!!」
魔王は激怒した。
後日、ハルミは驚異的な生命力で生き延びた魔王によって拷問じみた殺され方をするのだが、それはまた別の話。
魔王城の内見 零二89号 @No-0089
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