ヤンデレ元カノと内見

DRy0

第1話


「こちらが本日ご案内をさせていただくお部屋になります」

 不動産業者である男が、女性を案内している。


「近くにコンビニとドラッグストアがございます。

 女性が住まわれるのにも適した物件かと。」

「そうですね。あなたとこういう家に住みたかったですね。」

 男は、女が先週まで付き合っていた男性。いわゆる元カレだった。


「それではお部屋の方ご案内をさせていただきます。」

 男は女の言葉を気にもかけず、案内を続ける。


「玄関はこちらです。鍵の方、ご入居されました際には交換いたしますので、ご安心ください。」

「鍵を交換した後でも、あなたは私の家に入れますか?」

「はい。管理をいたしますので。」


 男は女の言葉を気にもかけず、案内を続ける。


「こちらダイニングキッチンとなります。」

「キッチン、きれいですね。お願いをした通り、コンロも4口ありますし、コンベクションオーブンも。

 ねぇ。

 あなたは私のつくる料理が好きですよね。特に私のつくるローストビーフとか、ポトフとか。あなたが美味しいって言ってくれたこと、すっごくうれしかった。いつも料理をつくりながら思い出してあなたのことを思ってる。最近、どうしてもつくりすぎちゃうんです。あなたと一緒にいたことがまだ忘れられなくて。もしかしたら、あなたがまた、私の家に来てくれるのかもしれないって思ったらどうしてもつくりすぎちゃうんです。でも、あなたは帰ってきてはくれなかった。ねぇ、あなたは最近何を食べてるの?ねぇ、どう過ごしてるの?ねぇ、私じゃ足りなかった?ねぇ、私じゃだめだった?ねぇ、どうしたら一緒にいてもいいのかな?ねぇ。ねぇ。ねぇ。はぁ、でも、私、知ってるんですよ。最近他の女と一緒にいるって。どうして?こんなにも私はあなたと一緒にいたいのに。」


「こちらがお風呂になります。本日は特別に浴槽いっぱいに湯を張らせていただいております。よろしければ。」

 男は女の言葉を気にもかけず、案内を続ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヤンデレ元カノと内見 DRy0 @Qwsend

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ