gift0

夢水 四季

住宅の内見

 私はとある組織のリーダーになる予定だ。

 今は、その組織の拠点となる物件を探している。


 不動産屋が案内した物件は神田神保町にある雑居ビルだった。 

 三階建てのビルの中に入ると、意外と日当たりも良く、家具も何も置かれていない部屋は広々として見えた。

「いかがなさいますか?」

「そうですね……、良いと思います」

 特に何も悪い所は見当たらなかった。

「防音素材で出来ていますし、夏目様のご要望にもお答えできると思います」

「ありがとうございます」

 とある組織、警視庁特殊捜査班「gift」。

 様々な職業からなる人々と共に多種多様な事件を解決する組織にする予定だ。

 そんな本当のことを言えるはずもないので、職業はテキトーにミュージシャンとした。

 イカれたバンドメンバーは今から集めることとして、果たしてどんな仲間が待っているのだろうか。楽しみだ。


「それでは二件目の内見に向かいましょうか」

「はい、お願いします」


二件目は秋葉原の物件だ。

 一階がラーメン屋になっており、豚骨スープの臭いが漂っている。

「少し騒がしいですね。それに、臭いが……」

「ですよねえ。では気を取り直して次の物件に行きましょう!」


 三件目は同じ秋葉原の少し込み入った場所にあるビルだった。

 部屋の中に入ると、何だか薄暗いなと思った。

 それに気になることは、もう一つあった。

「随分と価格が安いですね」

「はい、ええっと、それはですね……」

「実は事故物件だったりします?」

「ああ、あはははは、実は、そうなんです」

 不動産屋は極めて明るく白状した。

「通称お化けビル。何かの祠を取り壊して、その上に建てました。工事中にも作業員が原因不明の腹痛で工事は難航。一応、ビルは完成しましたが、その後も入るテナント入るテナント幽霊が出ただのなんだとで皆、撤退。今に至ります」

「よくそれを私に勧めようと思いましたね」

「いやあ、何かイケるかなって」

 軽薄なその態度には怒りを覚えたが、気持ちを抑える。

「それで、どうでしょうか?」

「最初に見た物件でお願いします」

「はい、承りましたー!」



 拠点は決まった。

 後はメンバーだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

gift0 夢水 四季 @shiki-yumemizu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ