水の蛇・金の龍
第44話 僕の罪とクラス委員会
……どうする?
視線を散らす。
前後左右どこを見ても……敵しかいない。
「諦めろ!
今投降すれば、情状酌量の余地があるかもしれないぞ?」
最終勧告。
だが投降するという選択肢は僕にはない。
命尽きるまで戦わなければならない。
なぜなら――
「お前が
投降したところで――殺されるからだ。
僕の周囲にいるのは男子生徒たち。
「皆、落ち着いて! 僕が何をやったっていうんだ‼」
「しらばっくれるか! 貴様あぁぁぁぁぁ!」
貴様なんて言葉を実際に聞くのは初めてだ。
「貴様が
……まさか――
しんかが隣に引っ越してきたことがばれてる⁉
火光しんか。
赤髪のストレートロング。
小柄な体躯に、整った顔立ち。
燃える瞳を持つ少女。
火の精霊に愛された子にして、僕と並ぶもう一人の「は組」委員長だ。
ひょんなことから僕のご主人様となった彼女は先日、僕の住むアパートの隣室に引っ越してきている。
クラスメイトたちの監視網を逃れるために、朝食を一緒に食べた後は別々に登校したのに。
……どうして気付かれた⁉
「いや、それは違うんだ皆!」
僕の言葉に無反応のクラスメイト。
僕の言い訳を聞くというよりは――
……遺言ぐらいは聞いてやろうって態度だ。
しかしそれならまだ――僕が生き残る可能性はあるはず。
……きっちりと対応して、僕は生きる!
僕の灰色の脳細胞が命の危機に直面することで、これまでにない馬力で回転し始める。
しんかが僕の家にいた理由。
それが許されるのは――
「しんかが今朝、僕の家にいたのは……彼女が僕の親戚だからなんだ!」
……これでどうだ!
僕の一言に
「火光さんが
……うん?
「えっ⁉ その話じゃないの?」
「我々が貴様に贖罪を求めていたのは、昨日
「……」
「何をやっているんだ、お前たちは」
がらりと音を立てて、担任の土浦先生(強面)が間一髪のところで入ってくる。
……助かった!
ホント死ぬかと思った。
教卓の上でミノムシの様に吊り上げられ、後は各精霊たちの攻撃を待つばかりだった僕からすれば、強面先生が来てくれたのは天の恵みだ。
「先生、何って……罪人の処理ですよ? 見てわかりませんか?」
「休みに二人を侍らせるだけじゃ飽き足らず、家に火光さんが来ただと⁉」
「もう一生分の幸せは使ったよな? 死んでもいいんじゃないか?」
彼らの身勝手な言い分に、土浦先生は呆れた様にため息をつく。
「とりあえず皆、冷静になって席につけ」
「ちっ、先生に感謝するんだな」
ガラの悪い連中が、自身の席へと帰っていく。
どうやら僕の命は助かるみたいだ。
「強面先生、ありがとうございます!
ついでに僕を降ろしてください!」
「……お前たち、黒白の処刑は後にしろ」
「「「はあぁぁぁぁぁい!」」」
「土浦先生! そこは『僕の処刑なんてやめろ』ですよね⁉」
……それだと後で結局死んじゃうよ!
「クラスの意向なら仕方ないだろう」
「先生まで
僕の身の安全のためにも、強面先生には聖職者らしく生きて欲しい。
なんだかんだ言いながら、土浦先生は僕を降ろしてくれる。
「強面先生、ありがとうございました‼」
「黒白、やっぱりお前は後で処刑されたほうがいい」
「なんで⁉」
「自分の言動を反省した方が良いぞ」
呆れたような目を向ける土浦先生。
……やっぱり朝のホームルーム前から騒いでいるのが良くなかったのだろうか?
「
土浦先生の話は、今後の「は組」に大きく関わるものだ。
クラス役員が僕としんかに決まったことで、今後「は組」は僕たち二人を中心として行事を戦い抜けていくことになる。
そして今月は――
「特に今月は『学年総代決定戦』があるからな。心して励むように」
学年総代決定戦がある。
今月の最後に二泊三日で行われるクラスマッチ。
各クラスで争い、勝ったクラスの委員長が学年総代として選出される潰し合いだ。
「そうだ。黒白と火光」
話を切り上げようとした土浦先生から呼び出される。
……何だろう?
しんかと呼び出されるってことは、流石に怒られることはないはずだけど。
「二人に関しては今日の放課後、クラス役員の会合が生徒会室であるから参加するように」
クラス役員が決まったことで、クラス代表を集める委員会も発足されるみたいだ。
「先生、僕たちは二人とも委員長なんですけど、それって大丈夫なんですか?」
隣のしんかはお淑やかに僕らの話を聞いている。
朝も見たけれど、相変わらずの美少女っぷりだ。
そんな彼女と一緒に委員会に行けることは嬉しいけど、基本的に各クラス代表は一人となっていたはず。
僕たちだけ
「あー」と少し言いよどむ土浦先生。
「お前らの扱いは例外だ。まさか魔人が役員決定戦に乱入してくるとは想定していなかったしな」
あの炎の魔人は役員決定戦に介入するというか、しんか――正確には「比翼連理」に関連した災害みたいなものだったから想定なんてしようがない。
「まあ、そもそもクラス委員と副委員の組み合わせが、クラス委員二人になるだけだ。人数的には問題ない」
「なるほど。特別に委員長を二人にすることで僕らの口を塞ぐ。
つまり――天下りですね!」
「そんなことを言うな。大きい声で言うな。
そして天下りの意味をちゃんと調べてこい」
まあ、二人でいいというのなら甘んじて受け入れよう。
僕としては、しんかと一緒に頑張っていきたいし。
……友だちだしね。
「しんか、頑張って全員倒そうね!」
「うん」
役員決定戦も越え、いよいよ個人からクラス単位での勝負。
負けられない。
「今日はあくまで顔合わせだから、勘違いして暴れないようにな」
それでも先輩や同級生は、僕の夢を阻むライバルだ。
負けないように気合を入れていきたい。
……それにきっと。
委員会には
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