サクラのヒミツ
鮎川 碧
誰かの”いつか”
「ずっと真っ黒な世界を彷徨っているの?」
「うん。全部真っ黒。なんにもみえない。」
「 、 ?」
⭐︎
⭐︎
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ピピピッピピピピッ
機械的な音が徐々に鮮明に聞こえてきた。
姿見のような縦長の大きな三つの窓から、陽の日が差し込む。
その光が顔を照らし、朝を告げている。
木造、二階建ての一軒家、その屋根のひっそりとした一室が僕の部屋だ。
いわゆる、屋根裏部屋、というやつだ。
天井には傾斜があり、勢いよく立ち上がると、運悪く頭をぶつけることが、たまに_____いや、しょっちゅうある。
部屋の広さも一般的なものからいったらひとまわり小さい。
一見使いづらそうに見えるが、これこそが屋根裏部屋の最大の特徴であり、秘密基地のような若人の心を踊ららせる雰囲気を醸し出すのだ。
そして僕は、その雰囲気にあたられた不運な人達の1人だ。
この屋根裏部屋には世間には知られていない、恐るべき敵がいる。
従来のものより2倍の大きさである窓。
それが三つ、ベットの左に並んでいるのである。
お気づきだろうか。
そう、最も恐るべき悪魔とも呼べるそれは_____
ヒューーーン
そう、隙間風だ。
眠りにつこうと、目をギュッと瞑っても、絶え間なく吹いてくるこの風に邪魔をされる。
「さっぶい、」
もう一度目を瞑ろうと思っても、風が邪魔をしてくる。いい夢を続きを見たい時も、この風のせいで見れないし、夢の途中で妨害をすることもある。
だからこの部屋はいやなんだ。
僕は少しため息をつき、渋々ベットから起き上がる。
歩くたびに木材が擦れるキシッという音が鳴る。
また僕はため息をついた。
今日もまた、憂鬱な一日がはじまる。
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