悪人しか殺さない最強エージェント、抹殺対象が良い子なので守ることにする
くまねこ
第1章 黄昏を舞う一羽の黒羽
第0話 不可思議な任務
端正な顔立ちの青年、おそらく高校生だろうか──。彼は事務所のような建物の中を駆ける。
迷路のように入り組む建物、曲がり角から男が飛び出してきてこちらに銃口を向けた。
「よ、よくもやってくれたな……! オレたちに歯向かって無事で済むと思うなよっ!?」
同時に、目の前の銃口が火を吹く。
「あっ、そう」
「ぐわっ!」
銃弾をかわしながら踏み込み、右手を振るう。そこには、肘までを覆う黒い手甲。しかし、明らかなリーチ外である。
しかし、男の頸動脈と手首は断ち切られ、赤色の噴水を撒き散らして倒れ込む。
手甲に覆われた右手には、これまた黒く輝くナイフが一本。
しかし、これは手甲と違い、何かこの世とズレたような気配を漂わせている。
血に染まる道を1人歩く。周囲には大量の死体が転がっていた。どれも、傷は少ない。全て、彼の仕業である。
武装した一般人など、彼にとっては取るに足らない存在。
「さすがだな。ここまで守りを固めるなんて。まあ、全然たりてないんだけど」
建物の最奥、今までとは違う頑丈そうな扉。
「ほいよっ」
それを回し蹴りで叩き割る。そのまま床を蹴って跳躍。扉ごとその部屋に入り込む。
社長室の名にそぐわず、他の部屋より一回り広いその部屋には、武装した男たちがいた。
一斉に銃口がこちらに向けられる。数は3つ。
他は近接らしい。淡く光った拳や冷気を放つ刃物がこちらに向けられる。
さすがに数人異能力者はいるらしい。でも、《災級》は
そんなの、敵でもない。
そう思うと同時に、放たれた銃弾を即座に見切って全てかわす。
「お、おい動く、ぐあっ」
「ひぎゃっ……」
「やめ……」
そのまま流れるように拳を振り抜く。体重と回転の乗った拳は拳銃持ちを容赦なく沈黙させる。
「うわあああぁああぁあ!!!」
腰だめにナイフを構えた大柄の男がこちらに走ってくる。同時に、炎を纏った剣の斬撃。
「2対1。戦術としては悪くない。でも、実力不足かな。出直してこい」
剣を左手の裏拳で叩き折り、髪の毛を掴んで引き落としながら下がった肋骨を膝蹴りで砕く。ちゃんと折れた肋骨が肺や心臓を破壊するように力をのせる。炎が消え、倒れ込む剣持ち。
それと同時に後方に蹴りを放ってナイフ持ちを蹴り飛ばす。
「アギっ!?」
悲鳴をあげるそいつの首を叩き折り、未だ数の多い敵に残心の姿勢をとった。
「はい、見た感じ全滅させたからあとは頼むよ」
『了解。さすがだな』
青年はその建物を抜け出してから電話をかける。組織にきちんと任務成功の連絡と後処理の要請。
「それで、次に取りたい任務なんだが、中東のテロ組織の殲滅、あれでいい?」
青年は難易度と報酬のコスパが一番高そうなのを受注しようとしたのだが……
オペレーターから返ってきたのは望まぬ言葉だった。
『あー、その任務は無理。キミには指名の任務が入ってる。キミの実力を買ってくれた人がいてね』
「マジかよ……」
指名された任務は、難易度が実力に対して高すぎる等のことがなければ基本的に必ず受けないといけない。
それが、この組織、【八咫烏】の数少ないルールの1つであった。
『内容はね、“とある少女の抹殺”だよ。データ送るから確認してね』
そんなわけで電話が切れた。直後に組織のデータベースから一つのメールが送られてきて青年はそれを開封する。
文面に目を通して彼はその異常さに絶句した。
『形式 排除任務
報酬 3億円
期限 発令から1年間
備考 常時最高レベルの警戒を怠らないこと』
「はあ?」
青年、
(異能なしのただの少女の暗殺依頼だぞ? こんなにレベルの高い依頼にしなくともそこそこのエージェントで何とかなるはずだ……)
その少女の経歴を見たところ特に不審なところはなく、むしろ学校では明るい人気者とのことらしい。
「まあ、別に良いか」
画面の下の方に映る『了解』の文字をタップして斗真はスマホを閉じた。
こうして彼は世界の命運を分ける戦争に身を投じることになったのだが、それは神のみが知っている。
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