コイガミサマ! 堕落女神と始める学園ラブコメ
@kokenokokeshi
第1話
「おい、まてや!このクソ猫がぁー!」
朝の住宅街には相応しくない少年の叫び声が響き渡る。
時折すれ違う通行人が様々な目で見てくる。その目は若干……いやだいぶ冷ややかなものだ。
それもそうだろう。なんせ男子高校生が必死に1匹の猫を追いかけているのだから。
なぜ俺があのクソ猫を追いかけているか。
それは今から数十分前に遡る。
新しい街で、新しく通う学校……。
ウキウキな気分で登校していた時、家と家の僅かな隙間から突如黒猫が突撃をかまして来たのだ。
そして、その黒猫もといクソ猫がぶつかった衝撃で落とした家の鍵を口で拾い上げ走り去って行こうとしたのである。
慌てて猫を捕まえ鍵を取り返そうとしたが、相手はすばしっこい猫である。
まんまと逃げ出してしまい、それを追いかけてでいまのこの状況となる。
「ハァハァ、どこまで走るんだよ……あの猫……」
かれこれ10分以上は追いかけているであろうか。
あのクソ猫、ちょくちょくこちらを見ながら速さを合わせてやがる……、舐め腐ってやがる……。
どこまで走ってきたのだろうか。周囲の風景が民家から雑木林へと変わってきた。
ふと後ろに目をやった隙に左へ曲がり小山へと入っていった。
「まさか、これを登るのか……?」
目の前にはそこまで高くは無いが制服で登るにはややきつめの小山があった。
「しかたが、ないか……」
覚悟を決め小山の中へと入っていく。
以外にもこの小山には人の手が入っているらしく、石造りのよく神社で見かけるような階段があった。
「あ!あのクソ猫!」
そして、その階段をクソ猫が駆け上がっているのが見え
その後を追っていく。
だいぶ登ったであろうか。下を見ると相当な段数を登ってきたらしい。3分ぐらい登っただろうか。
階段が終わり少し開けた場所に出た。
そこにはかなり古い鳥居があり、その奥になにやらボロボロの小屋らしきものがある。
どうやらここは神社らしい。
しかし、いまはそんなことはどうでもいい。
あの猫は……。
「あ!」
あのクソ猫はボロボロの小屋の前に置いてある賽銭箱の上にちょこんと座ってこちらを見ている。
鍵は賽銭箱の上に置いてあるのが見える。
「よーし、よくもおちょくってくれたなぁ。」
少し腰を屈め、賽銭箱の上にいるクソ猫を捕まえる姿勢になる。
その時だった。
「あら、こんなとこまで人が来るなんて珍しいわね」
どこからともなく声が聞こえてきた。
そしてボロ小屋の屋根を見るとそこから同じ歳ぐらいであろうか。1人の黒髪の少女がこちらを覗いていた。
……美しい……。思わず見とれてしまう。
あ、それよりもあの猫は!?
あのクソ猫はどうやら気を引かれている隙に周囲の森の中へと消えていってしまった。
「おい!クソ女!お前のせいであのクソ猫を取り逃しただろうがぁ!」
「はぁ!?なによ!勝手に人の家に入ってきてその態度はなんなのよ!?」
一瞬固まる。
ここが家……?
周囲にはボロ小屋しか見当たらない。それに定期的に手入れはされているのだろうが人が常にいるような雰囲気はない。
ここで俺はひとつの答えにたどり着いた。
あの子は、少し頭がおかしい子なのだ。という答えに。
「あ、そうでしたか。」
「ふん! わかればいいのよ。ていうか、なにその気持ち悪い目は……?」
俺は精一杯優しい目をしながら少女の方を見る。
よし、これ以上関わったらロクなことにならないな。
逃げるか。
思ったら即行動がモットーである俺は回れ右をし走る体制に入る。
「それでは、さようならー」
「あぁ!ちょっと待って!ねぇお願い!」
後ろで何か叫んでいるが聞こえないふりをする。
よし、もう少しで鳥居を超える。
その時だった。
『ドン!』
大きな音をたて、なにか透明な壁なようなものにぶつかった。
「痛ったぁ!」
思いっきり壁と思われるものにぶつかり、特にダメージが大きかった鼻を抑えながら座り込む。
「その、ごめんね……。結構デカい音がなったけど、大丈夫だった……?」
後ろから申し訳なさそうに少女がこちらに歩いてくる。
今気づいたが服装がおかしい。なぜか着物を来ているのだ。それも時代劇で見るようなかなり本格的なものを。
「この状況を見て大丈夫そうに見えるか?」
「うぅ、ごめんなさい……」
なんか可哀想になってきたな。まぁ別にそこまで怒ってないからこれくらいで良しとするか。
「別に大丈夫だよ。腫れてもない見たいだし」
これを聞いた瞬間パァと顔が明るくなるのが分かった。
面白いくらいにわかりやすいな。
少し笑いそうになるのを抑え、ひとつの質問を投げかける。
「君は、一体何者なんだ……?」
少女はこの質問を待ってましたと言わんばかりにニヤニヤとした顔になって立ち上がり胸をポンと叩いき意気揚々と自分の素性を話し始めた。
「ふふ、よく聞いてくれたわね!私はね、神様なのよ! どう?驚いた?」
ニヤニヤとした顔でこちらに尋ねてくる。
「ほぉーん、それで名前はなんていうの?神様なら、例えばスサノオノミコトみたいな感じの名前があるんでしょ?」
何故か少女の顔が固まり、段々と泣き顔のような感じになっていく。
「……いのよ……」
「え、なんて?」
聞き取れなかったので思わず聞き返す。
「だから!まだ名前はないのよ!名前がなくて悪かったわね!」
どうやらこれは彼女の地雷だったらしい。涙目になりながら大声で返事をしてきた。
「嫌なこと聞いて悪かったよ。でも名前が無いならなんて呼べばいいんだ?」
「フン!分からないわよ。なんせ名前なんてずっとなかったですからね!」
完全に拗ねている。
同じ歳だと思ったが、まだ子供なのだろうか?
どうやったら機嫌を治してくれるだろうか……。
そうだ……!
「名前!名前を決めないか?」
「名前を決めるって……、そんな勝手に決めれないのよ。」
「なら、あだ名みたいな感じで言うのはどうだ?」
「それは……、多分大丈夫なはずよ」
少し機嫌が治ってきたらしい。表情が和らいだ。
名前か……。
神様、か……。
「……ミコト……」
「え?」
「ミコト、なんてどうだ……?」
少し考えているようだ。
……どうやら気に入ったらしい。表情が元に戻っていくのが分かる。
「ふーん、まぁまぁなセンスね。褒めて遣わすわ」
どうやら相当気に入ったらしい。ずっとにこやかな顔をしている。
「ていうか、あなたよく私のこと信じたわね。自分で言うのもアレだけど、怪しいと思わなかったの?」
「いやいや、先程人知を超える力を全身で感じたので嫌でも信じたよ。あぁ、そうだった。なんで俺を引き留めようとしたんだ?」
目を逸らし若干罰が悪い顔をする。
「いやぁ〜、それはぁですねぇ……」
その時だった。
「はぁ、それは私が説明しよう。」
後ろから渋いおっさんのような声がした。振り返るとそこには明らかに人間では無いオーラ、しかもかなり強いオーラを発しているおっさんがいた。
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