7話 焦げたトースト

 ジュネより先に目が覚めた。外はまだ暗い。どれだけ待っても朝が来ないというのなら、副詞の使い方が適切ではないかもしれないと思ったが、それを話せる相手はまだ夢の中にいる。

 一人で行動するのは怖かった。カフェに内設されたトイレはそれほど離れていなかったが、そこに行くだけでも鼓動が速くなって息苦しさを感じた。

 戻ってくると、足音で起こしてしまったのか、ジュネが目をしょぼしょぼさせながらラップトップを開いていた。

「おはよ……」片手を弱々しく動かしながら、ジュネはそう言って挨拶をした。「五時間睡眠かあ。ちょっと足りないな」

 朝食を取る為にフードコートへ移動する。

 だが、メニューはどれもヘヴィ級だ。油で揚げられていたり、タレがたっぷりかかっていたり、あとは、単純に量の多いものを食べたい気分ではない。外がずっと夜のままなので、さあしっかりと食べて一日頑張るぞ、という気概がわくでもなく、ただ寝起きの熱っぽいだるさだけがある。ソファで寝たので体の節々も変な具合に痛かった。

 相談した末に、自動販売機の列に並んでいるホットスナックを見に行く事にした。やはり、味の濃いものが大半で、ヘヴィ寄りのミドル級といったラインナップだったが、フードコートのメニューよりは朝食向きといえそうだ。

 ホットサンドを二つ買い、別のマシンで缶コーヒーも調達してフードコートに戻った。料金は約束通り、すべて利玖が負担した。

「ずっとディナーのメニューしかないって辛いわ」ジュネが嘆く。しかし、ホットサンドにかじりつくと、

「あ、美味しい」

と呟いた。

「サラダとかヨーグルトとか、ビタミンの取れる物が欲しいですね」利玖は缶コーヒーを開けた。一口飲んだが、そこでテーブルに置く。「あと、ドリップコーヒーも」

「カップ式のやつ、買ってきたら?」

「うーん……」利玖は自動販売機群を振り返って眉をひそめる。

 ジュネはそれを見て肩をすくめ、「こだわりがあるのね」と言った。

 カフェの精算機は店員によるオペレーションが必要なシステムで、それ以前に、どれが飲み物を作る機械で、どうやって使うとコーヒーが淹れられるのか、二人ともわからなかった。

 史岐の所でコーヒーが飲みたいな、と思った。

 もう一日くらい粘ってみるつもりだったが、気が変わった。

「ジュネさん」

「なあに?」

波來ならいみつるが早逝する運命を変えられると言ったら、兄に内緒で、一つ頼まれてくれますか?」

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