第3話

「えーっと…とりあえず服はこっちが弁償させてもらう」


そうか。これは向こうの責任だから弁償してもらうことが可能なのか。


「では!迷惑料として一着服をください!」


「ぜんぜんいいんだが…その…お前はそいつでいいのか…?」


もしかしてもうちょっともらっても良かったのか…?


「では追加で果実水を一杯ください!」


「え、あぁ…うん。わかった」


ここまでもらうのに文句一つ言わないおっちゃんはいい人だ

果実水の恨みはすべて消えた。


「ありがとうございます!」


「服は…これでいいか?これ以外だったらつなぎぐらいしか持ち合わせがないんだが…」


おっちゃんはシンプルな皮のワンピースを見せてきた。

…だが!断る!


「つなぎ!いいですね!」


「え?」


「つなぎは作業にも使えるし雑草とかで足がかぶれることもないし!」


そう、実はトレファーナ商会は現地まで直接商品を仕入れに行くことで有名なのだ。

…いや、たいして有名でもなかったんだけど

そのときに重宝したのがつなぎだった。

私の心が折れなかった理由のうち一つがこれだ。


「ぜひ!ぜひつなぎをください!」


「あぁ…わかったから!わかったから!だからさっさとどこかへ行ってくれ!」


おっちゃんは魔剣を怖がっているように見える…

確かに動いてる魔剣は不気味で気持ち悪い。

私はこのおっちゃんの気持ちがすごく分かった。


「ありがとうございます!」


もらった果実水とつなぎを持って私はすぐに屋台から離れた。

もらったつなぎは新品のようだしすぐに着るのはもったいない。

ならあの手段で乾かすしかないか…


「では!さようなら!」


私はその足でダンジョンへと向かった。

変な魔剣と関わってしまった憂さ晴らしでもある。

いつものところで軽く狩ろうか…


「あそこ良いものないんだけどなぁ…」


そう、これから私が行くダンジョンはろくなものがないのだ。

売ろうと持っていったこともあったが鼻で笑われて門前払いされた。

つまりは、それだけ価値がないものなんだ。


「マスター?どこに行くんですか?」


「ダンジョン」


私は短くそう答えた。

このあたりでダンジョンといえば一つしかないだろう。

…あのやたら長いダンジョン!!

本当は近くに変なダンジョンもあった気がするが行ったことはない。

数が少ないらしいし行ってもストレス解消にはならなさそうだからだ。


「数が多いからストレス解消に最適だしね」


そこそこ強くてそこそこ数が多いから一番ストレス解消できるのだ。

…ただし良いものはない。

本当に趣味で潜っているだけなのだ。


「278階層へ」


私の下の魔法陣が光りだす。

…正直眩しいから別にこの演出はいらない。

行ったことある階層へ飛べるのは便利だけどね。


「さてと、今日も狩りますか」


あの方法で服を乾かしにも行かないといけないしね…

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