快晴の砂漠地帯

@raikumain

第1話 廃病院前にて

私の名前は、碧園。


 私は、祖母にいとこの骨を回収するように頼まれた。


 その骨は、山梨にある、山奥の廃病院にある。その廃病院は、昼間は、周辺にあるぶどう畑のおかげで、比較的、地中海沿岸風の和やかな雰囲気だが、夜間は、無機質な廃病院の建物が異様な雰囲気を出すから、正直いかめしい。


 回収する日、私は、病院の入り口に車を停めた。


 「山〜恵会総〜病院。」

 字は、ところどころかすれていた。

古い病院で、旧帝国陸軍の軍医らが開いたらしい。

 また、幽霊が出るといううわさがあり、近寄る者があまりいなかったという。

「こんにちは。」

急に声がした。

 凝視すると、そこには、パーカーの上にコート。薄汚れた茶色のズボン。そして、少し高級なハットを被った十代の若人がいた。

「どなたですか。」

「この土地の所有者の息子です。今は、私が実質的な管理をしています。

今日は、どういった用事で。」

「碧園一の遺骨を回収しに来ました。ここの病院に収められていると聞きました。」

「アオゾノ ハジメさんですね。分かりました。ちょっと待っていて下さい。」


 数分後、所有者の息子が戻ってきた。

「見当たりました。極楽浄土天ヶ島一丁目すいかマンション304にあります。」

「極楽浄土?」

「はい。この廃病院では、二十年前、極楽浄土への宅配や郵便が開始されたのです。まぁ、初めて聞いた人には信じ難いと思いますが。」

「本当ですか。」

「うーん。まぁ、とりあえず信じます。」

私は、廃病院の中へ入っていった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る