DKときどきJK

ゆゆゆ

第1話

 俺、小波結さざなみゆい、十七歳。どこにでもいる冴えない高校一年生。性別、男。一つ上に二卵性双生児の双子の姉たちがいる。因みに二人ともむっちゃ可愛い、一日十回は告られてフっているらしい。趣味は読書とカラオケ。勉強の成績は中の下。運動もあまり得意ではない。学校では髪が長いせいで顔がよく見えず、おまけにメガネで無口なせいで『陰』な奴だと思われている。そんな俺でも一つだけ特技がある。

 それは変装だ。

 正確には女装。

 俺は中性的な顔立ちに中性的な声色、そして中性的な名前をしている。それが原因で小学校と中学校ではよくイジメにあっていた。男子からのイジメは単純だからまだよかった、けど女子からのイジメはなんというか、こう陰湿で精神的にくるものだった。そんな俺を見かねた姉たちから提案されたのが女装だった。「顔と声が原因でイジメが起こるならいっそのこと女装して堂々とすればイジメは起らないんじゃない?」と。でもさすがに学校でするのは単純に嫌だったのでするのは外だけにした。今までは外でもクラスメイトにあうとよくイジメられていたが今は変に絡まれなくなった。というより俺に気づいていないっぽい。中学では校則で髪は短くしないといけなかったし、制服も男子用のを着ないといけなかったしで。男子の服装なのなに顔や声は女子っぽいからやっぱり周りから変な目で見られるしで結局イジメが発生するしで。だから高校ではなるべく知り合いがいないところを選んで顔は髪でかくして、声も周りに聞かれないよう無口になって、一応のメガネをかけてみたいな感じにした。おかげで小、中学校の時みたいにイジメがあることはなかった。かわりに『陰』な奴みたいに思われてぼっちになってしまったけど。今でも女装している訳は単純にずっと女装していたせいで男子用の服がないからと、あとは姉たちから女装していた方がオシャレと言われたから。因みに女装した姿に関しては二人から太鼓判を押されている。

 そんなこんなで今日も女装して街を歩いているとある光景が目に映った。一人の女性に対して三人の男たちが囲んで話しかけている。まあ、いわゆるナンパってやつだ。

「ねー、いいじゃん。俺らと遊ぼうよー」

「そうそう、きっと楽しいよ」

「すみませんが結構ですので……」

 ナンパ男たちはそう言って逃げようとする女性の手をつかむ。女性は嫌そうにしながらも手を振りほどこうとしない。きっと恐怖でそれどころじゃないんだろう。身体震えてるし。そうしてナンパ男たちの一人がニヤニヤしながら女性の腕をつかむ力を強めた時だった。

「あの……ナンパするのは良いですけどせめて移動してからやってくれません?」

 俺は声をかけた。

「あぁ?なんだおま……おっふ」

「うっせいな!関係ないだ……おっふ」

「おい、二人ともどうし……おっふ」

 男三人組がこっちにガン飛ばしてきた、と思ったら変な声を出して硬直してる。

 声をかけたのは別に助けようと思ったからじゃない。ただ単に邪魔だなと思ったからだ。だってナンパしている場所が場所だもん。横断歩道のど真ん中でやってるんだよ。邪魔でしかないでしょ。

 男三人組はまだこっちを見たまま硬直している。……なんか頬赤くなってない?まあ、いいや。それより早く移動しないと。目立ちたくないし。

「あの、大丈夫ですか?」

「「「っは!だ、大丈夫です!」」」

「そうですか、それより早く渡りましょう。ほら信号点滅してますよ。続きはあっちでお願いします」

「「「は、はい!」」」

 そうして男たちは急いで走った。渡り終わったのを確認すると俺は女性の手を掴み男たちとは反対方向の、元きた方向に渡った。渡りきったところで俺は手を離す。

「大丈夫でしたか?」

「は、はい!助かりました!ありがとうございます」

 女性は顔を赤くしながらそういうと頭をさげてきた。ぱっと見た感じ年は俺と同じくらいか。綺麗な人だな。でもなんだろ、なんかどっかで会ったことあるような気がする。うーん……気のせいかな?

「本当にありがとうございました」

 女性はまた頭をさげてくる。

「あ、はい。次からは気をつけて下さいね」俺はそんな女性にそう言うと再び歩き始めた。が、

「あ、あの!」今度は俺が女性に手をつかまれた。

「えっと……」

 なにこれ?っは!これはもしや、ナンパ男たちから助けたお礼をさせてくださいという、アニメとかにあるやつでは?!

「なにか?」

「そ、その……もし良かったら連絡先交換しませんか?勿論あなたがよかったらですけど……」

 きたー!マジですか。ありがとう神様! いやでもまて、早とちりするな小波結。これはもしかしたら詐欺の可能性がある。だって、たかがナンパから助けただけで連絡先交換なんておかしい、そうに違いない。俺はそんなのにはひっかからないぞ。ここは丁重にお断りさせていただこう。

「いいですよ」

「そうですか!ありがとうございます」

 何やってんだ俺!

「じゃあ、これ私の連絡先です」

 そう言って女性はスマホを取り出してQRコードを見せてきた。

 まあいっか。何かあったらその時に対処すればいいし。

 俺も自分のスマホを取り出しカメラで読み取る。すると画面に『姫川結奈』の名前とアイコンが出てきた。

「姫川結奈さんっていうんですか」そう聞こうとしたら。

「あれ?もう登録してある。ん?このアイコンと名前って」

 と、姫川さんが驚いたような顔をした。

「もしかして君って『陰』の結くん?」

 聞き覚えがある単語にぴくりと反応する。……ん?今この人なんて言った?『陰』の結くん?なんでこの人からそんな言葉出てくるんだ?

 …………………あ。

「あーーーーーー!!!」

 気がついた。姫川姫奈という名前。俺が在籍しているクラスの委員長だ。だからなんか見たことあるなって思ったのか。

 あ〜、やっちまった。

 女装バレちった。俺の人生、終。俺は心の中でお経を唱えた。

 南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。合掌。

「あ、あのなんで女装してーー」

「じ、じゃあねーー!!」

 俺は急いで帰路に着いた。◇◆◇◆◇◆

 家に帰り自分の部屋のベッドにダイブする。そして枕に顔を埋めて足をバタバタさせた。

「ん゙〜!!!」

 あー、やっちまった。まさか委員長にバレるとは。もうお嫁、じゃなかったお嫁にいけない。

 俺は枕から顔を離し仰向けになったまま天井を見つめる。

「どうすっかな〜」

 こんな時はやっぱり姉たちに相談するしかないか。

 ベットから降りサンダルに脚を入れて部屋を出た。

「亜咲、暁葉、ヘルプミ〜」

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