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「それは……」

「どうせ来ないのはわかっているからさ、一人でやると思えば気も楽よ」

 ははは、と力なく笑う留美とフロアに入る。


 広々としたフロアには、社員はまだ誰も来てなかった。お掃除のおばちゃんたちが3人、せっせと掃除をしている。彼女たちに挨拶をして、私たちはロッカールームへと向かった。


「華はなんでこんなに早いの?」

 上着を脱いでロッカーにかけながら、留美が聞いた。

「今日の会議室の使用状況、確認しとこうと思って」

「え、じゃあ、そっちやっていいよ」

「メールの既読確認して会議室とれているか見るだけだから、すぐに終わるわ。先に一緒に朝の用意するね」

「そう? ありがと」


 以前のお茶当番といえば、女子社員が一人一人の机に好みの飲み物を置くというとんでもなくめんどくさいものらしかったらしい。今は、社員が来た時にコーヒーなりお茶なりを飲めるように、男女問わず主査以下の当番が用意するだけだ。

 とはいえこの作業も、来年社内に自動販売機が設置されればやらなくてよくなる。私が入った時よりも、会社の業務がどんどん今どきの風潮に変わっているのは、うん、良いことだ。


「おはよう」

「おはようございます」

 お茶の用意をした後会議室のチェックをしていると、ちらほらと社員が出社してきた。


「おはようございまあす」

 始業ぎりぎりでやってきたのは、もう一人のお茶当番、この春入った新人の高塚満里奈だ。今日もばっちりメイクが決まっている。留美が淡々と声をかけた。

「おはよう、高塚さん。今日、お茶当番だったでしょう?」

「すみませぇん」

「次の当番の時はちゃんと来てね」

「はあい、気をつけまあす」

 こちらを見もしないで、いつも通りの答えが返ってきただけだった。留美じゃなくても、ちょっとため息が出る。

 その高塚さんは、急にそそくさと一人分のコーヒーを入れるとミルクと砂糖を入れてからお盆にのせた。


「おはようございまあす、主任」

 見れば、ちょうど主任が来たところだった。

「おはよう、満里奈ちゃん。今日も気が利くね」

「そんなあ。当然のことですよぅ。あ、ミルクとお砂糖、一つづつですよね」

「さすが、よく覚えているねえ。満里奈ちゃんみたいな若い子に入れてもらうコーヒーはうまいなあ。ははは」

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