第39話
八十神さんの思いつきで始まった「わからせダンジョンRTAアタックin白金10号!」なわけだけど、いざダンジョンの中に入ってビックリしちゃった。
だって、いきなり山の頂上にいたんだもん。
ダンジョンの中でも特に珍しい、山岳地帯ダンジョンなんだって。
細い山岳路みたいな通路で各エリアが繋がっているんだけど、吊り橋を渡る場所もあるみたい。
通路が吊り橋になってるってことはすんごく高い場所にあるってことで、当然、落ちちゃったら問答無用でリセットになる。
こ、怖すぎる。
そんな場所でモンスちゃんに襲われちゃったら死を覚悟することになるし、今回は他のスカベンジャーさんからの妨害も考えられる。
まぁ、流石にリセットさせるくらいのことはしてこないだろうけど。
そんな状況でゴミ拾いしながら最下層に行かなきゃいけないなんて、ちょっとハードすぎやしませんかね?
《こんまお〜〜〜》
《スタンピード中なのに、再び配信助かる!!!》
《てか、山岳地帯ダンジョンなんてあるんだな。初めて見たわ》
《え? 東北地方では珍しくないけど?》
《え? そうなの?》
《地域ごとに特色とかあるんかww てことは沖縄はビーチとか?》
《↑砂漠エリアならあった》
《砂漠www》
ダンジョンに入って配信をスタートさせたんだけど、魔王軍のみんなも大盛り上がりの様子。
スタンピード中で配信してるスカベンジャーさんも減ってるみたいだし、みんな配信に餓えてるんだろうな。
《え!? てか魔王様、トモ様と四野見さんと一緒なの!?》
《今回はクリーナーズの活動配信らしい》
《マジか!!!》
《四野見さんとトモ様の3人パーティとかワクワクしかしねぇwww》
《それなww》
《あずき:てか、なんでまおだけ場違いな格好してるの?》
「……え?」
場違いな格好?
「掃除するときって、この格好するもんじゃない?」
いつもの魔法少女風ドレスの上にエプロンを着て、頭には三角巾。
さっき【あたし好みにな~れ】で作ったんだよね。
かわいくない?
《あずき:掃除って……あ〜、はいはい。そういうことね。把握》
《いや、だからなんで掃除スタイルなんだよwww》
《これから大掃除なのかな?》
《かわいいけどさ》
《あ、わかった。魔王様、盛大に勘違いしてるなこれ》
《そんなわけないだろいい加減にしろ》
「……?」
よくわからん。
ゴミ拾いに来てるんだし、このスタイルが正装でしょうに。
早速、足元に落ちてた空き瓶をポーチの中にぽいっと入れる。
「よし。それじゃあ、とりあえず中層を目指そうか」
そう切り出したのは、四野見さん。
「10号だから、ダンジョン自体のレベルは高くないけど、山岳地帯ダンジョンは僕も始めてだから、慎重に行こう」
「ええ、そうですね」
「はいです!」
トモ様に続けて、まおが元気よく返事をする。
四野見さんってば、なんだか頼りになる感じがするなぁ。
3人の中では一番経験があるし年長者だから、お兄さん的な立ち位置になってもらおう。
「あと、戦闘時のルールも決めておいたほうがいいかもしれないね。この3人で探索するのは始めてだし」
「ルール?」
「うん、そうだよ魔王様。誰がターゲットを受けて誰がどう攻めるかを決めておくんだ。そうすれば、いざというときにどう動けばいいか考えずにすむ」
「おお、なるほど!」
思わず拍手。
「四野見さんってばホント色々と考えているんですね。尊敬しちゃいます」
「あ、ありがとう。けど、魔王様も戦闘中は色々考えてるでしょ?」
「え? まぁ、そうですね」
すごくかわいいモンスちゃんだなぁとか、あの毛並みに顔を突っ込んでモフモフしたら気持ちいいだろうなぁとか。
そう言われると、頭の中、結構忙しいかも。
「戦闘中って意外と色々頭を使うよね。だから動き方を決めとけばそこに頭のキャパシティを使わなくて済むんだ」
「……なるほど、キャパシティって重要ですよね」
うんうん。キャパシティね。
なんとなくニュアンスでわかります。
というわけで、簡単にすり合わせをすることに。
協議の結果、重装備の四野見さんがモンスちゃんのターゲットを受けて、俊敏力が高いトモ様が攻撃の主軸を担うことになった。
四野見さんとトモ様で具体的な連携を決めて、お次はまおの役割を決める。
「よしそれじゃあ最後に魔王様だね」
「そうだな、まおたんは──」
「掃除係ですかね?」
「「……え?」」
《あずき:不穏な空気》
《掃除係wwww》
《まぁ、そうなるよなwww》
《見た目からそれだもんな》
「え、ええと、掃除係って言うと、最後のトドメってことかな? 確かにクリスタルドラゴンと戦ったとき、魔王様は強力なスキルを使ってたみたいだし、それで仕留めてくれると助かるかな」
「わかりました! がんばります!」
《この顔、絶対わかってないww》
《わかった! (わかってない)》
《四野見さん、魔王様の右腕みたいになってるな》
《うまくコントロールしてる》
《四野見さん有能だなぁwww》
《これはもう大魔王軍に入ってもらうしか》
《あの、トモ様がすげぇ四野見さん睨んでるんですが・・・》
《ほんまやwww》
《私の座を奪うなとか思ってそうww》
というわけで、ルールを決めたところで移動開始。
ゴミを拾いながら、目指すは中層への階段があるエリア10だね。
まぁ、山岳地帯なのに階段があるって変な感じだけど。
それから10分くらいお散歩したけれど、まおたちが出発したのが遅かったのか、上層のモンスちゃんは他のメンバーさんたちに狩られちゃったみたい。
ところどころ、モンスちゃんを倒したときに出てくる素材が転がっていた。
これはゴミってわけじゃないけど、一応、ゴミばさみで拾ってポーチの中に。
というか、ゴミ拾いを始めて気づいたんだけど、ダンジョンって意外と汚いんだね。
キュアポーションの空き瓶とか、壊れた装備とか放置されちゃってる。
こりゃ、空気も淀むわけだわ。
「……みんな気を付けて! モンスターだ!!」
先頭を歩いている四野見さんが声を上げた。
同時に、3人のモンスちゃんが頭上から降りてくる。
棍棒を持った、鬼みたいな見た目の筋肉ムキムキモンスちゃん。
オーガちゃんだ。
みのりちゃんが見たら「オスみがあるでござる!」とか言って喜びそう。
「よし! 決めた通りに行くよ神原!」
「わかりました」
間髪入れず、四野見さんとトモ様が動く。
まずは四野見さんがオーガちゃんに突っ込み、剣を振るう。
ダメージを与えるための攻撃っていうより、注意を自分に向けるためって感じだ。
その思惑通り、オーガちゃんたちが一斉に四野見さんに襲いかかる。
ひとりめのオーガちゃんの棍棒を横に躱し、ふたりめのオーガちゃんの攻撃はジャンプして回避。
だけど、着地した瞬間に最後のオーガちゃんの棍棒が襲ってきて──。
「くっ!」
間一髪、大剣で攻撃を防ぐ。
すごい! オーガちゃんが振り下ろした棍棒を受け止めた!
「今だ神原!!」
「……行きます」
トモ様の拳が輝き出す。
「はああっ! 【鉄拳制裁】ッ!」
きたぁ! トモ様の鉄拳制裁だ!
華麗なフットワークでオーガちゃんの懐に飛び込んだトモ様が、拳の乱打を叩き込む。
「おらおらおらおらおらっ!」
「ぐおおっ!?」
巨大なオーガちゃんの体がぐらりと揺れる。
流石はトモ様!
オーガちゃんを圧倒してる!!
「……って、いかんいかん。まおはゴミ拾いしなきゃ」
トモ様に見惚れてる場合じゃないよね。
「お。空き瓶発見」
「ぐわおおおっ!」
「あっ、ごめんねオーガちゃん、まお、ゴミ拾い中なんだ。ちょっとどいてもろて」
「ごわっ!?」
オーガちゃんが遊びたそうにやってきたけど、ゴミばさみで腕をつまんでポイッ。
《wwwww》
《あの、魔王様?》
《オーガをポイすんなwww》
《ゴミはポーチの中に入れてもろて》
「せっせ、せっせ」
一生懸命、ゴミ拾い。
てか、本当にゴミが多いなぁ!!
ダンジョンにポイ捨てしたの誰!?
よくないよ、ホントそういうの!
「神原! 2匹目行くよ! 同じ連携だ!」
「了解……っ!」
《おおおお!》
《四野見さんかっけぇ!》
《トモ様もすげぇ!》
《四野見さんとピッタリ息が合ってんな!》
《こりゃクリーナーズに選ばれるわけだわ》
《てか、魔王様との温度差www》
「……ぐわおおおっ!?」
オーガちゃんの断末魔が轟く。
どうやらトモ様が2匹目のオーガちゃんを仕留めたのか、キラキラと光の粒に変わって大きな牙がころりと地面に落ちた。
あっ! ゴミ!
──じゃないか。
あれはダンカリでも売れる素材だ。
5分と経たず、3人のオーガちゃんを倒しちゃったみたい。
いやぁ、流石ですわ。
「……あ、あの、魔王様?」
戦闘が終わり、四野見さんが恐る恐る尋ねてきた。
「ちょっと質問なんだけど、一体何をしてるの?」
「……え? ゴミ拾いですけど?」
あ! ここにもボロボロになった革鎧のパーツが捨てられてる。
ポーチの中にひょいっ。
そんなまおを見て、四野見さんが苦笑いを浮かべる。
「あはは……こんな状況でゴミ集めをするなんて、魔王様は偉いなぁ」
「うむ、スカベンジャーの鑑だな」
「えへへ、ありがとうございます」
ゴミ拾いはダンジョンにすむモンスちゃんのためにやってるんだけど、偉いって言われるとやっぱり嬉しいもんだなぁ。
まお、偉い!
《これには魔王様もニッコリ》
《多分褒めてない》
《トモ様は多分褒めてる》
《wwww》
《トモ様www》
《あの、四野見さん? こういうときはズバッと正直に言ったほうが良いですよ?》
「あ、それ、まおも同意!」
四野見さんってば影響力があるし、こう、ズバッと言ってほしいよね!
ダンジョンにゴミのポイ捨ては良くないって!
―――――――――――――――――――
《あとがき》
お読みいただきありがとうございます!
少しでも「先が気になる!」「面白い!」と思っていただけましたら、
ぜひページ下部の「☆で称える」をポチポチッと3回押していただければ、執筆の原動力になって作者が喜びます(笑)
フォローもめちゃくちゃ嬉しいです〜!
また、すでにフォロー&☆を入れてくださった方々、本当にありがとうございます!
感想もすべて目を通しており、すごくモチベアップになっております!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます