結婚パレード、デコトラを添えて
お貴族のご機嫌はすこぶる良いので問題なくデコトラはルーメンデス領に持っていく事になった。軽トラの荷台に主役を乗せるので軽トラもついていく。
最近では軽トラであちこち走り回っているのでそこまで怪しい目で見られなかったがデコトラは別だ。
通り過ぎる村々、すれ違う人々、一様に唖然としていた。車体に描いてある絵も去ることながらそのデカさは驚異的である。日本人の僕でさえこの大きさには驚かされる。
そうして彼方此方で驚きをばら撒きつつ僕達はルーメンデス領の領都に着いた。
メッサジェントのお屋敷は郊外にありトラックはそこに停めることになる。
明日のパレードの流れはお屋敷から軽トラに乗りながら街を走り回り教会に行く。そして結婚式が終わったら軽トラに乗って屋敷に戻る。勿論の軽トラの後ろにはデコトラが追走している。
そこでトラックのお役は御免。屋敷ではパーティが開かれて僕達も参加する事になった。招かれたの僕、アスカさん、ゴドウィン、アカンサスさんの四人。他にもドワーフはついてきたがお貴族様のパーティより街ではしゃいだ方が嬉しいらしい。まあ、あんな粗暴で下品な奴らだ貴族の前には出せないだろ。
そんなこんなでパレード当日。燃料も満タンだし、パレードする大通りの下見も済ませた。いつもの様に運転するだけでいい。
ただいつもと違うのは何だか高そうな服を僕が着てる事だ。絶対高い筈の礼服を僕は着ている。汚したら買い取りかな、これ。
アスカさんもデコトラの運転手を任された為ドレスを着ている。いつもの作業着と違い、別の魅力が溢れている。アスカさんも何だか嬉しそうにしているが、
「これ運転しづらいな」
ドレスと一緒に用意されたヒールが気に入らないらしい。確かにあのヒールだとアクセルもブレーキも踏みにくそうだ。
僕は汚さないように慎重に軽トラに乗り込み、荷台に御両人が上るの待った。
荷台に乗った本日の主役はバッチリとめかし込んでいる。純白のスーツにドレス。ああ、ビアンカさんお綺麗です。
「よし、出発してくれ」
「お願いします」
メッサジェントとビアンカさんの合図に従い僕はエンジンをかけた。そしてゆっくりと街の中心地に向かって行く。
軽トラの前には派手な衣装の兵士が列をなして歩き僕を先導してくれている。僕は彼らの後ろをトロトロついていけばいいだけだ。
沿道には多くの市民がおり二人の結婚を祝った。花吹雪が飛び二人を祝福している。この光景だけでいかにメッサジェントが市民に慕われているかが分かる。
「メッサジェント様!ビアンカ様!」「お幸せに!」「万歳!万歳!」
市民は口々に祝福の言葉を二人にかけている。バックミラーを見るとビアンカさんは嬉しそうに手を振っている。本当に幸せそうだ。
ただ一つ気になる事がある。なんか二人を乗せた軽トラが通り過ぎると後ろの方でざわざわしてるのか聞こえる。後ろにいるのは勿論あのデコトラだ。
昼間っからガンガンにバカでかいライトをつけて軽トラの後ろをついてきている。その迫力たるやパレードの主役が霞んでしまうほどだ。そしてさっきからミラーに光が当たってチカチカ鬱陶しい。昼間はライト消せよ。
そんなわけで軽トラが通り過ぎると今度はそれがやってくる。それを見た市民がざわついているのだ。
「メッサジェント様!……え?魚?」「うおー!万歳!ばんざ……ドラゴン?」「おめでとうございます!おめでと……でか、なにこれ……」
これは本当に結婚パレードなのか?本当にこれでよかったのか?御両人はニコニコして機嫌が良さそうなのでいいが、やっぱり何か間違っていると思う。
僕はただ無心で運転をした。後ろでデコトラに乗ってるアカンサスさんが騒いでいるが勿論聞こえない。何故アカンサスさんが乗り込んでいるのかは誰も分からない。
「そこの君可愛いね!後でお茶しよ!そこの君も!」
アカンサスさんは多分いい人だけど一度捕まった方が世の為になると思った。
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