まったりトラック
帰り道はアスカさんのトラックの助手席に僕は乗っていた。
軽トラは燃料切れで牽引してもらっている。その軽トラの荷台にはドワーフ達が乗りワイのワイの騒いでいる。
「いやーよかった、覚悟はしてたけど豚箱行きは嫌だったんだ」
「そうですねアスカさん、あの貴族には感謝しないと」
「なあ、ヒカルはよかったのか?」
「何がですか?」
「ヒカルはお嬢ちゃんを送っただけで何も貰ってないだろ?タダ働き同然じゃん」
「あーそうですね。まあカッコつけたかっただけです。それにあの貴族から何か貰えるらしいんで大丈夫です」
「そうか、それならよかった」
「それにトラックで暴走するのも何だか楽しかったんで」
「ははっ!そうだな!気持ちよかっただろ!」
「はい、自分でも信じられないです」
「楽しんだならいいか」
「そうですね……」
あ、何だか眠気が……ずっと緊張の糸が張ってたけど急に切れた……意識が、
「かっこよかったぜ、ヒカル」
「うん?……はい?」
アスカさんが何か言ってる。けど眠くて……
その後の事はよく覚えていない。次に目覚めたのは工房の前で、僕がぐっすり寝ているところをゴドウィンがぶっ叩いて無理矢理起こされた。
「馬鹿共!」
トラックを持ち逃げしたメンバー全員がゴドウィンに怒られた。罰として工房の雑用をしばらくやらされた。まあ、牢屋に入るよりマシだし僕らが悪いのは決まっているので真面目に従った。
ただその雑用がいつも僕がやっている事であった。僕の仕事って罰だったのか?それともゴドウィンが気を遣ってくれたのか?何だか分からないまま僕はモヤモヤした感情を抱えつついつもの仕事をこなした。
後日ゲースクは脱税の容疑で捕まった事を知った。そんなゴタゴタで僕たちは未だ捕まっていない。貴族に逆らった罪だがその貴族がいないなら立件出来ないのだろう、ざまーみろ。
そして同時期にビアンカさんから手紙が来た。逃亡の手助けしてくれたお礼と無事メッサジェントと結婚できると言う報告である。それと一緒にメッサジェントからお礼の金貨が送られてきた。
懲罰組はみんなで喜んだがゴドウィンがボコボコになったトラックの修繕費に充てると言って殆どを持っていってしまった。
残った金貨は迷惑料として酒場で工房のみんなに酒を振る舞った。元々泡銭だし、お金の為に働いた訳じゃないから気にしない事にした。
僕はお酒が飲めないので豪華な料理を隅っこで堪能している。そこにドワーフ達が絡み酒をしてきた。
「美人さんを逃して残念だったな!」「それよりヤッタのか!トラックの中では二人っきりだったろ!」「なんだ!ヒカルが遂にヤッタのか!」「な訳ないだろ!ヒカルだぞ!」「ガハハ!」
素晴らしい思い出を汚しやがって。全員くたばりやがれ。
僕はしれっとドワーフの皿の肉に辛味ソースを大量にかけて移動した。僕はアスカさんの下へ向かった。その途中後ろからドワーフが盛大に咽せる声が聞こえた。いつまでも大人しくしてると思うなよ。
「おう!ヒカル!楽しそうじゃねーか!」
「はい、ご機嫌です」
「それはよかった。今度また貴族を見つけたら、送り届けようぜ」
「そうですね、その後はまた宴会しましょう」
「お?ヒカルの奢りか?」
「もちろんです!」
「かっこいいぞー!ヒカル!」
その夜は遅くまで宴会が続き、僕が就寝する為部屋に戻っても下から愉快な声が聞こえる。だけどそんな声も今は心地よかった。
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