蕾
廻り巡る季節のなか。
また柔かな、季節がやってきた。
私とあなたは再開のこの時を、木陰で休んでいる。二人の時間をゆったりと、感じあう。
久しぶりのあなたとの、ゆっくりした時間。存分に甘えさせて貰おうではないか。
『なでなでして』と。
あなたにねだってみたりする。
「甘えん坊さんだな」
そんな事を言いながらも、あなたは撫でてくれる。その手で、「愛してる」の優しい言葉も忘れずに。
ふと、撫でる手が止まった。
不思議に思ってあなたを見上げる。
目が合う。
『どうしたの?』
「あ、いや。随分と黒の似合う女の子になったなって。感慨深いものだよ、本当。
まったく困っちゃうぐらい僕好みだよ」
..うぅー。あなたという人は....
『性癖で出ちゃってるんじゃない?』
「ギリ、セーフでしょ」
ふっふっふっ。
あなたは穏やかな笑顔で笑い出す。
とてもバカらしくなって、私もつられて笑う。
──何度も同じ会話を繰り返して。
──何度も何度も同じことを繰り返して。
私たちは、浸る。その最中を。
敢えて口には出さずにいる。
私たちはずるかったんだ。
これが夢だからって、甘えてた。
もう、そろそろ終わりにしようよ。
あなたも随分と老けたから。
苦しいのは辛いでしょ。
『.....私わかってるんだ。また終わりがくるのも。私が居られる季節は短いから、すぐなくなっちゃうことも。
あなたが同じ夢を見させてくれてるんだよね?
多分私は寝たきりの、植物人間なんでしょ?こうやって定期的に頭の中で同じ夢が回ってて。夢を見るときがきっと、あなたがお見舞いに来てくれて、手を握ってくれる瞬間なんだよ』
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