灰色の双子猫

虫谷火見

プロローグ

ある街のゴミ捨て場。


山と積まれた中身入りのゴミ袋がゴソゴソと揺れる。

そこには、頭から胴の中程までをゴミの中に突っ込んだ灰色の猫が2匹。

しなやかな後ろ足をさらけ出しててんでな場所からゴミを漁り、真っ直ぐで細長い尻尾を揺らしている。


この2匹の灰色猫が夢中でゴミを漁っていると、突然何かが突進して2匹の猫を順番に突き飛ばした。


ぅな~~ぁゔぅ〜〜〜…


フシャァァァ…!


低いうなり声交じりで2匹の灰色猫を威嚇しているのは、恰幅かっぷくの良い長い毛並みの茶トラの猫。


その茶トラ猫の尻尾なんかは特にふさふさで大根並みの太さなんだが、先端は中程から二股に分かれていた。


突き飛ばされた2匹の灰色猫は一旦茶トラ猫から距離を取り機嫌を伺うように細い声で鳴いていたんだが、やがて踵を返して逃げて行ってしまった。


茶トラ猫がやれやれと言うように頭を振り、振り向いた。


「おっと、っと。見られちまったか。こいつは恥ずかしいね。」


茶トラ猫は、驚いた様な表情を見せた。


それがまた、無性に人間くさい表情なんだが、そのせいか人の言葉まで喋ってるように思えてくる。


「アイツ等にはいつもゴミなんて漁るもんじゃねぇって言ってあるんだがな。中々、められねぇみてぇだ。」


「まぁ、これも何かの縁だ。せっかくだからこの俺様がアイツ等の話を聞かせてやろうじゃねぇか。」


そう言って、茶トラ猫は付いて来いとばかりにこちらを一瞥いちべつし、のそのそと歩き出したのだった。

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