第7話
「そ、そんな…どうして…?」
「お前の裁判を見たよ」
「それなら…」
「俺は、…俺もお前は本物じゃないと思う」
「… …は?」
「お前のお守りは、持っていても役に立たないし」
「役に…立たない」
「それにあんなに証言者がいるなんて、やっぱりおかしいと思う。だから、お前、この仕事向いてないよ。別の道を進んだ方がいい」
「… … …」
「さすがに愛想がつきたんだ。俺、ずっとお前に騙されてたんだって」
「なんのはなし?」
「ほら、お前、前に言ってたじゃん。お前の先祖は、神に仕えてたんだって。このお守りの仕事は、その神様たちとの橋渡しだって」
「ええ」
「でも、それも嘘だったんだ」
「は?」
「お前の先祖は、大したことなかったんだ。なのに神様との橋渡しとか…お前、本当痛いよ」
開いた口が閉じられない。
なんかもう、どうしてこの男と私は付き合っていたのだろうか。
あの裁判を見て、あの証言者たちの話を聞いて、どうして、私がおかしいという話になるんだ…。
「だから、俺はもうお前との縁を切る。これも返すよ」
そういって、私が彼に作ったお守りを返される。
彼の健康を願った健康長寿を願うお守りだった。彼は、小さい頃、病気がちで、体も平均より小さかった。それなのに、今ではこんなに立派になって…。
「じゃあな。お前も心を入れ替えて生きろ。3丁目のお守りを買ってみたらいいよ。後利益が半端ない本物だから」
「… … …」
様々な感情が、こみあげてくる。
そういえば、私が最初に作ったお守りは、彼の為を思って作ったんだった。
病気が退きますよにと願い、健康を願い、長寿を願い…今だって、色々な人たちのことを考えて作っていたけど、そういえば、最初の最初は、そうだったなぁ…。
どうして、今頃になって思い出してしまうんだろう。
「はぁ… …これからどうしたらいいの…」
私は、これ以外に道なんてない。
それなら、いっそのこと… …。
私は、家を出ると、ふらふらと外へ歩き出す。
川沿いを歩き続け、空を見上げた。星空を見つめていると、無心になれる。そうして、ずっと顔を上げ続けていて、足元が留守になっていた。帰り道、私はもうすぐ家に着くというところで、大きな何かにつまずいて、転んでしまった。
「あ、痛っ!?」
大きくて、柔らかいものにつまずいた気がする。
私は立ち上がり、転んだ先を見つめた。
子どもだった。
うつぶせになっているから、顔は分からないが、全体的に薄汚れていた。
服は、ところどころほつれているし、髪もぼさぼさで鳥の巣のようにこんがらがっていた。
「え、ええええ!?き、君大丈夫!?」
まさか、こんな道の真ん中に子どもが倒れているだなんて…。
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