私が作るお守りは偽物らしいです。なので、他の国に行きます。お守りの効力はなくなりますが、大丈夫ですよね

猿喰 森繁

第1話

作業は、けたたましく扉を叩く音で、中断された。

扉を開けると、兵士たちが数人立っていて驚いた。


「エイデル・ハント!お前に詐欺罪で逮捕状が出ている」

「はい?」


今日は良い天気だ。

昨日は、ずっと雨だったから、空気も澄んでいる。散歩して、寝起きでぼんやりしていた頭に空気を入れ、体も頭もフル充電だ。

さっそく、仕事にとりかかるぞ!と意気込んでいた時にこれである。


「どういうことですか?私に逮捕状?詐欺?一体なんのですか?」

「貴様の作るお守りのことだ!」

「は?」


お守り?私が作るお守りで、詐欺罪?


「貴様は、ロイド氏のお守りをそっくり真似して、偽造し、売りさばいているだろう!しかもまったく効力のないお守りを高い値段で売りつけている。ロイド氏から、被害届が出されたんだ」

「な、なにを言っているんですか…私のお守りはちゃんと効果があります…しかも、ロイド氏のをパクったですって?あんな外見だけのちゃちなものを私が真似するわけないじゃないですか!そもそも私は、ロイド氏より先にお守りを売っていたわ!」

「ええい!うるさい!早く来い!」

「ちょ…、わかりましたから…。いたい!」


どうやら、今日は厄日みたいだ。


「罪人エイデル・ハント申し開きはあるか」

「あります。私のお守りが、パクリってどういうことですか」

「貴方が作るお守りは、私たちが真心こめて作ったお守り、そっくりに作ってあるんですよ。これが詐欺でなくてなんだというのですか」

「あんたたちのちゃちなお守りなんて、パクるわけないでしょうが!」


お守りというのは、ただの飾りではない。

家内安全、心願成就、厄除け、学力向上など、一般家庭向けのもあれば、船が事故に合わないようにと祈願する海上安全守やら、旅人の安全を祈願する旅守りなど、仕事や命に係わるお守りだってあるのだ。

私の家は、代々お守りを作っている。それは、もともとご先祖が神に仕える身であり、他の人の橋渡しとしてのお守り作りである。

つまり、こっちは正真正銘、神様の神通力がこもっている本物のお守りである。

その辺のお守りとは、効力が違う。

このお守りの効力を知るものから人伝手で、わざわざ長い時間をかけて買いに来るお客様もいるくらいである。

歴史も効力もあそこでニヤニヤ笑っているおっさんが作っているお守りとは、わけが違う。


「大体、貴方が作るお守りには、何の力も宿っていないんですよ。私には、それがよく分かります」

「は?素人が偉そうに、何言ってるの?」

「私は、こう見えて神様に仕えている身でしてね」


うさんくさっ!

そんな話、一度も聞いたことないけど!?

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