人類滅亡させたい俺と人類救いたい君

紫宮めい

第1章 始まり

第1話 混沌

崩壊術式ほうかいじゅつしき…」


全てをした。


生き物、建物、思想、ことわり


俺が崩壊出来ないものはほとんど存在しない。


俺の大切な物…


奪ったこの愚かな下等生物かとうせいぶつを殺す他ない…


――――――――――――――――――――――


「ゼツ〜起きるのよ〜」


人間界―そこはこの俺ゼツことアイリスが征服した世界に何故か俺は来ている。


かつて最恐とうたわれたこの俺がこんな下等生物に転生しているかって?


俺も知らねぇな…


覚えてるのは誤って力の暴走をさせちまったのだけは知っている。


恐らくそれが原因なんだろう。


そして俺を呼んでいるこの声の主はゼツの母親である「スミレ」だ。


これで人間の生活は9年と半月がすぎて少しは慣れた。


この6年で学んだことは、この貧弱な体では本来の力が使えないこと。


かつての異界に連絡が取れないこと。


忘れてはならない人間がやはり嫌いなこと。


俺ことゼツ・イリミヤは人間の国【クーデンベルク帝国】の伯爵家だった。


「まぁ一応貴族らしい」


そしてめんどくさいのが横にいるがこの国の第1位の名門ラフォンス家のご令嬢の【セシリア・ラフォンス】だ。


「セシリアお前とあろうものが伯爵家の俺と話していいのかよ?」


「あら、私はそんな事気にしないわよ?」


「俺が気にするんだよ!!」


「あなたは私にとって唯一の友達なの!ほかの方達は公爵家ってだけで怯えるのよ」


「無理もないだろ」


とりあえず俺は自分の正体を誰にも悟られず今までひっそりと暮らしているのだが。


ときおり剣術の指南中に父上から「お前は強すぎる」「特別」など意味不明な言葉をかけられるが、俺はこれといって力は隠しているつもりだ。


食事中のことであった、父上が最近セシリアと仲良くやってるか?と話をかけられた。


適当に返した。


――――――――――――――――――――――


〇〇××年それは、突如現れた。


いるはずも無い歴史的にも初めて姿を現した生物は皆から【異界生物いかいせいぶつ】と言われていた。


そして異界生物は皆、尋常では無いほどの力を持っていた。


人々や魔族の血肉をくらい、女こども容赦なく喰らい尽くす最悪の生物の頂点と呼ばれている5人の存在…


それが…


「Another《アナザー》」


Anotherは格が違かった…ひと味もふた味も…


目の前にたっただけで震える。ほかの者は倒れるやつもいた。


だが俺は違かった…


「ふふふっ」


俺が笑ったのが気に食わなかったAnotherの1人は目にも止まらぬ速さで俺の背後から一突き。


周りは俺が死んだかと思った…


Anotherは胸を貫いたはずの腕が消え去っていた。


この世界のルールと言うべきものは、個人に1つ特殊能力が付与されることだ。


俺はその中で禁忌と呼ばれている術式【崩壊ほうかい】が俺の能力だった。


崩壊とはかつて昔、テクノロジー時代とでも言おうか、かなり前の産物だと言われている。


物体を目に見えなくなるまで砕いたものを粒子と読んでいたんだ。


その粒子を操る能力で、俺が触れているものがその場で消え失せるといった代物だ。


そして崩壊の対処法はないが弱点がある。


それは【能力は術者に依存すること】だ。


もとが高い俺が使えばAnotherの1人や2人は余裕で殺せる。


実際、俺はAnotherを全員殺し、異界の王になったんだ。


その中で俺の数少ない親友だけが話し相手だった。


「アイリス〜!」


「来たか!ミセス!!」


「今日は何して遊ぼうか!!」


「でもアイリス…王様の仕事はしなくていいの?」


「気にすんなって!!俺たち友達だろ?」


「嬉しいよアイリス!」


「これからも一緒にいような!ミセス!!」


約束した、俺はずっとミセスといると…。


だがそれも時間なく終わった。


異界を恐れた人間と魔族が力を合わせ俺のいる異界城に攻め入ってきたのだ。


ちょうど俺は不在でミセスと俺の配下しかいなかった。


そこからは一瞬だった。


俺が帰ってきたらそこには、無数の骸とミセスの損傷が激しい遺体たったそれだけだった。


俺は我を失った、破戒の限りを尽くした、魔族も人間族も全て崩壊させた。


どちらもしぶとかった、素直に諦めればいいものを今では俺がこの世界を滅亡に追いやった伝説のAnotherとして書物に書かれている。


俺が悪者だって?


バカを言え、ミセスを殺したのはあんたらなんだよ…


そして力を乱用しすぎた俺は今に至る…



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