妻の秘密
うらし またろう
第1話 突然の知らせ
午前中の会議が長引きすっかり昼食を食べそこね空腹と疲労を抱え、自分のデスクに戻ると、部下から「何度も携帯鳴ってましたよ」言われた。
私用携帯を確認すると、見慣れない同じ番号からの着信があり、その番号は都内の固定電話のものだった。
なんだか嫌な予感がし、すぐにその番号にかけた。
電話は、都内中心部の警察署につながり、電話にでた女性に着信があったことを伝えると、数分待たされた後、代わったのは、
低い声の中年だと思われる男性で平野と名乗った。
「急いでいるので、要件だけ伝えます、奥様が先ほど交通事故に遭われて、病院に搬送されました。」
私はその言葉に困惑し、言葉を失った。
事故の経緯を端的に説明されたが本当のこととは信じられず、ただ呆然と話を聞いた。
「とにかく急いで病院に向かってください、事情を聞く必要があるので、私も向かいます」
教えられた事故の場所は、大手デパートや高級ブランドショップが建ち並ぶエリアの近くだった。
妻には不釣り合いの場所だと違和感を覚えた。
教えてられた病院は、事故現場からほど近い総合病院だ。
病院の救急窓口に行くと、集中治療室を案内された。
ガラス張りの中のベッドに妻は寝かされ、腕からは管のようなものが見えた。
後ろから「山下さんですね?」とゆっくりとした声で話かけられた。
振り向くと医師と思われる手術着の身にまとった白髪混じの男性が立っていた。
「手術は無事に終わりました」
私は少しほっとし、笑みを浮かべると、
少しの沈黙の後、医師は、「大変言いにくい話ですが、奥様はこのまま目を覚まされない可能性が非常に高いです」と告げた。
詳しい事はあちらで説明しますと、小さな個室に案内され、妻の容態を説明された。
ときおり難しい医学用語を使われたが、簡単に言うと打ち所が悪く脳の損傷が激しい為、回復は難しいという事だった。
怒りのような悲しみのような感情がこみ上げてきた。
どこか他人事のような感じもして、不思議なほど冷静に話を聞いた。
集中治療室の前に戻ると、看護師が妻の所持品を差し出してきた。
一番上に妻のスマホが置かれていた。
スマホを手に取ると、LINEが立て続けに3通届いた。
私は何故か急にそのラインの内容を確認したいという衝動にかられた。
そしてスマホをポケットに入れた。
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