第2話 イキリ散らかしていくスタイル
「配信、配信だと……!? いや、VTuberなんだから当たり前か」
一瞬面食らったあたしだったが、書類選考と形式的な面接だけで決めるわけがないよな、そういえばと納得する。
これは大手VTuber事務所に受かるための試験。
VTuberとしてのそれ相応の資質が求められるわけだ。
「キャラ作るべきか? いんや、まんまの方が逆に良いだろ。声もわりと良いからな」
転生特典がTSだとしたら、大成功だったかもな。問題は本人が望んでねぇってことだけどよ。
容姿(ロリであることを除けば)、声(不本意なことにカワボ)、ともに良いヤツがヤサグレたキャラを演出(素の性格)するのはなかなかインパクトあるだろ。多分。
あとはあたしがキャラを取り繕わずに済むから、ストレス値が溜まりにくい。これが理由の九割だな。
低燃費で生きていたい。そんな季節です。
「問題は何をするか、だな……。コンテンツに頼りやすいゲームは却下。多分それだと落ちる。かと言って雑談30分はハードルが高い。一歩間違えりゃただの自語りだ」
ゲーム実況だとか、そこら辺の才能があるやつは別だが、あたしの場合そこまでのスキルは持ち合わせてない。
ただの素人がやってるゲームも、一定数需要があるとしても、これから先VTuberとしてやっていくためには、他との差別化ができる明確な「武器」ってやつが必要だろ。
あたしに置き換えると、声。それと前世で培った歌の技術。キャラの濃さ。
「なるほど歌枠だな。雑談と歌を両方アピールできるし、特に歌は大きな武器になりやすい。……その分ライバルは多いが」
母数は多いが頭角を表せば、一気にトップに躍り込むこともできるローリスクハイリターンの素晴らしいコンテンツだ。
んな簡単なもんじゃねぇのは分かるけど、少なくともヤサグレキャラが実は歌上手、とかは萌えるよな。萌えろよ。
「フッフッフ……!! ハーハッハ!!!」
とか未来を想像して大笑いしてたらリビングにいる母親に呼び出された件。
「あのさぁ。良い加減定職に就いてくれない? あんた一人養うだけでそれ相応の金が掛かるの。餌代だってタダじゃないのよ?」
「餌……」
「友達もいない。恋人もいない。定職にも着いてない。あんたのアイデンティティってなんなの? 肥大化した容姿への自信とプライド?」
「めっちゃ刺すじゃん……」
「粗大ゴミに成り果てる前にさっさと稼いで、家にお金入れなさい。もしくは自立して一人暮らししなさい。まあ、あんたの交友関係じゃ一人じゃなくて、孤独の独の独り暮らしだと思うけどね、はは。折角トンビが鷹を産んだかと思ったら鷹がアホウドリになって私は悲しいよ」
「泣くぞ」
ブスブス毒を刺してくる母親に満身創痍なあたし。……いや、まあ高校不登校になってずっとニートしてるから、色々とフラストレーション溜まってるのは分かるから何も言えねぇ……。
んでも、あたしが人生二週目じゃなかったら耐えられんぞこの言葉。
なんか耐えられるギリギリの言葉を選んでる気がするけどな……。
「今面接中だからちょっと待ってくれよ。受かれば人生変わる」
「あら、そう? 仕事してくれるなら何も言わないわよ」
「おけ。吉報を待て」
「昔から何気に偉そうよね、あんた」
精神年齢は上だからな。
イキリ散らかしてる時点で肉体年齢に引っ張られてる自覚はあるが。
母親のお小言(猛毒)を受け流し部屋に戻ったあたしは、早速課題である配信動画の作成へと入った。
☆☆☆
──1か月後。
あたしの手元には、煌々と輝く合格の文字が踊っていた。
「VTuberの天下取ってやるよ。あたしが行くぞ……!!」
ずっと変わらずあたしはイキっていた。
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