第42話 ウサギと作戦会議
【ゴブリンをさらに100体討伐しました。この種族には特異固体や上位個体が存在するため、100体討伐毎にこれまでに倒した個体の持つ特性の中から選択して付与されます。以下の候補から一つ選択してください。『2足歩行成分アップ(極小)』、『精力アップ(小)』、『魔力感知』、『剛力(中)』、『剣技』、『風魔法』、『回復魔法』】
『紅鎌団』とパーティーを組んでサクサクと魔物を殲滅していたら、またもやゴブ100匹アナウンス。
あれ? この魔物討伐カウント数ってパーティー組んだらどうなるんだろう。
個人単位? パーティー単位?
『紅鎌団』の他のメンツの表情を伺ってみたが、『
そういえば、『
まあ、レベルアップとかの際に脳内に響いてくるあの声の事なんだと思うが、多分それであっているだろう。
本当にゲームみたいな世界観なんだなと思いつつもさらに疑問が生じてくる。
この『世界の声』は誰の声なんだ?
魔物の討伐数をカウントしているのは誰なんだ?
レベルとかスキルのシステムを構築した誰かがいるんじゃないのか?
前世ではそれなりにゲームをプレイしたりラノベなどの創作物にも触れていたので、この疑問は当然のことというか、むしろなぜ今まで気づかなかったという感じだ。
今の段階で言えることと言えば、この世界には神様なりゲームマスターなりの上位の存在が居て、システムとか構築しているんだろうなってことくらいか。
ある程度の予想は付いたが、このことはあまり深く掘り下げるべきじゃない気がする。
ウサギが深淵をのぞく時、深淵もまたウサギをのぞいているかもしれない。
裏の事情に詳しくなればなるほど、その上位の存在はオレのことを排除しようとしてくる可能性が非常に高い。
だから、その件には気づいていないふりをしておくのが一番良い処世術だと結論づける。
おっと、そういえばゴブボーナスが得られるんだったな。
忘れずに取得しておかなければ。
迷った挙句、今回は【回復魔法】を取得した。
やっぱ、美味い草(薬草)がいつでも食えるわけじゃないし、ウサギの身体じゃ草を持ち歩くこともできない。
いつでもどこでも回復できる手段は持っておいた方がいいだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
戦場は、落ち着きを見せていた。
狼やコボルド、そのゾンビ。
空を飛ぶ鷹のような魔物やコウモリども。
そして突進イノシシと大量のゴブ。
そんな魔物たちは、防衛隊の奮戦によってもはや数えるほどしかその数を残していない。
「よおっし! 守り切ったぞー!」
気の早い冒険者が早々と勝利宣言のような叫びをあげる。
その姿はボロボロで、疲労困憊なのが見て取れる。
周囲の冒険者や自警団の人たちも大体同じような状態で、皆傷を負って疲れ切っている様子だ。
残念ながら死者も出ている様子だが、この規模のスタンピードに相対したにしてはその数は少ないらしい。
「まだだ! 油断するんじゃねえ!」
冒険者たちの指揮をしているギルドマスターのルシアノさんが場を引き締める。
ふと視線を騎士団の人たちに向けると、皆一様に険しい表情をしており、その表情だけでこの戦場がまだ終焉を迎えていないことは明らかであった。
自警団などより練度のはるかに高い騎士団や、それなりに戦える訓練を積んできた衛兵の人たちにも、疲労の様子は感じられる。
まだ戦えないことはないであろうが、これからさらに大軍を相手取るのは厳しいと思われた。
「ギルマス殿! 提案がある!」
騎士団長であるエルネストさんがルシアノさんに呼びかける。
「まだこの奥にも魔物の群れがいる気配がある。それに、この集団を統率していると思われるボスの姿もまだ確認できていない。つまり、これから先が正念場だ。」
エルネストさんの話に、ルシアノさんが大きくうなずく。
どうやら、この二人の現状認識は同じようだ。
「いったん戦線を下げ、負傷者や疲労の激しいものは街の中に退避させたい。そして、これから先は精鋭で当たるのが良いと思われる。いかがだろうか?」
「ああ、俺も同意見だ。斥候の報告によれば、この先は強力な魔物の気配がしているらしい。低ランクの冒険者ではいたずらに犠牲を増やすだけだ。」
「うむ、感謝する。して、ウサギ殿もそれでよろしいか?」
オレにも聞くのかよ!
なんか防衛隊の幹部みたいな扱いになっていますけど?
まあ、無視するわけにもいかないし、オレも全く同意見だったのでウサヘッドを縦に振って同意の意を示す。
「ウサギ殿は本当に深い知性をお持ちなのだな」
「ウサ公! お前のおかげで大勢の冒険者が助けられた! 礼を言わせてくれ! だが、まだ終わりじゃねえ! もうひと踏ん張り頼むぜ!」
騎士団長とギルマスの言葉に、オレは無言で前足をしゅたっと上げて、感謝の意を示すのであった。
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この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!
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