第33話 忍ぶウサギ
ふう、肉うめえ。
でも、そろそろお塩が欲しいハクトです。
そういえば最近、ちょっと気になったことがあるんだ。
これまでちょこちょこと食べる分のオークさんを狩らせていただいていたのだが、「なんでこいつら、日々仲間が狩られているのに単独で出歩くんだろう?」という疑問が頭に浮かんできたんだ。
で、今はオレのウサボディの中で絶賛消化されているオークさんをストーキングしていた時の様子なんだけど、どうも何かを探して歩いていたみたいなんだよな。
もし何か探しているのだとすれば、文字通り自分が犠牲になる危険を冒してまでの行動ってことになる。
なんとなくだがウサギの直感というやつなのか、この件に関してはうやむやのままにしておいてはいけないような気がしてくるのだ。
よし、食休みも終えたしちょいと探りを入れてみるか。
◇ ◇ ◇ ◇
先ほど見つけたオークの集落。
その集落の一番大きな建物の中に、足音を消して忍びこむ。
ちなみに今のオレの体毛の色はシックな木目調だ。
木製の建造物にしっくりと馴染むために適度なウェザリングまで施しているんだぜ?
で、この建物の中の様子なのだが、なんか偉そうなオークさんが他のオークに向けて身振り手振りを交えて怒鳴り散らしているんだ。
オークにもオーク語ってのがあるみたいで、こいつらはあるていど独自言語でのコミュニケーションがとれるっぽい。
人語を解するウサギであるオレでも、さすがにオーク語はわからないな。
よかった。さすがに言葉の通じる相手と認識してしまえば、これまでのようにお肉を食べることが出来なくなるところだったな。
でも、いくら言葉がわからないからといって、しゃべっている奴を食うっていうのもどうなんだって思わなくもないのだが。
まあ、今のオレは魔物なのだ。
食わなきゃ死ぬし、負ければ食われるのだ。
美味いと感じるもの物はありがたく食する方向性は間違っていないと信じて生きていこう。
で、偉そうなオークの説教? 演説? が終わると、周囲にいたオーク共がそれぞれうなだれた様子で自分の家? に戻っていく。
そんな中、ひときわ悲壮感を漂わせたような一匹が集落の外に出ていくのを見つける。
どうやら、今回単独で集落の外に出るのはこいつの様だな。
一体どんな理由や目的があるのだろう?
オレはまたまたストーキングを開始する。
◇ ◇ ◇ ◇
単独行動のオーク、この際オー君と名付けよう。
オー君は、いつもならそろそろオレが狩り時と判断するくらいの距離、集落から離れている。
いつもの癖で思わず狩りそうになるが、今回は目的が違う。
オー君が何を目的としていて、どんな理由があって単独でこんな行動をしているのかを突き止めなければならない。
オー君は、一定の距離を歩くと周囲の様子を探る様なそぶりを見せる。
何かを探しているのだろうか?
でも、もしオー君、いや、オークの集落の連中が何かを探しているのならば、全員で探索に出る方が効率的だと思うのだ。
なのに、いつも探索? に出歩くのは一度に一匹だけ。
ますます意味が解らない。
オー君の目的がわからぬままストーキングを続けていたが、突然オー君が何かに気付いたかのように早足になった。
そのあとをつけていくと、その先にはちょっとした滝のある湖みたいな水場があった。
どことなく神秘的なその水場を見つけたオー君は、ひときわゆっくりに、そろそろと滝の方に近づいていく。
滝の周辺にはなにかキラキラと色とりどりの光が飛び交っており、なにやら楽し気な様子が伝わってくる。
そこにオー君がそろそろと近づいていき、ある程度まで近づくと一気に駆け寄って手を伸ばす!
すると、楽し気に飛び回っていたキラキラの光は驚いたように一斉に周囲に飛び散っていった。
今のは何だ?
視覚のきかないウサギにはその光る何かがなんなのかよく見えず、聴覚と嗅覚をもってしてもよくわからなかったのだが、なんとなくのウサギ直感で「妖精?」という単語が頭に浮かぶ。
となると、オー君は妖精を捕まえに来たのか?
そして、オー君は手のひらを眺めて落胆したような空気を醸し出しており、どうやら捕獲には失敗したようである。
どういうことだろうか。
オー君は集落の集団から一人だけで妖精の居場所を探し、あわよくば捕まえに来ていたと。
妖精を捕まえようとする目的はわからないが、少なくとも居場所を探すのであれば単独で捜索に出る意味がまだ解らない。
オー君を見ると、あきらめたのかうなだれた様子で集落に戻る様だ。
よし、ここは一足先にオー君よりも先に集落に戻って様子を確認してみよう。
◇ ◇ ◇ ◇
戻ってきましたオークの集落。
そこではなんと。
この集落の物と思われる集団と、他のオーク集団とが一触即発のにらみ合いを行っていた。
なんだこれ?
集落同士の勢力争いか何かかな?
見ると、オー君の所属している陣営の集団は、相手のそれと比べて数が少ない様子。
なるほど、少し見えてきたかもしれない。
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この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!
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