第6話 不可思議な呪文
リサは宿から表にでると、開口一番俺に質問をなげつけてくる。
「まず最初に、アナタの住処を教えて頂戴」
「え? なんで俺の住んでるところに興味があるんです」
「そりゃあるわよ。ワタシにとっては、とっても重要なこと。これからの生活に、おおいに関わることだから」
これからの生活に大いに関わるって……リサ、ひょっとして俺に気がある??
「分かった! 俺の部屋に案内するよ」
俺はスキップしながら宿の裏口にまわると、1階の階段下にある物置件、オレの部屋のドアをあけた。
「ここが、俺の部屋です。どうですか?」
「なるほど、なるほど? 悪くないわね」
リサはドアを開けるなりスタスタと入っていき、念入りに部屋の中を確認する。
「うん。これなんかちょうどいいかも。中身はからっぽよね?」
「え? あ、うん。そうだけど……」
どこから取り出したのだろう。リサは自分の背の高さくらいの漆塗りの杖を取り出すと、中身が空っぽのタルを杖でつっつく。
「うんうん。大きさと言い形といい申し分ないわね」
そう言うと、リサは、銀色の髪の毛を数本抜いて樽の前にかざすと、何やら呪文を唱えながら、漆塗りの杖で空っぽのタルをコンとたたく。すると、髪の毛がまるで生き物のように、シュルシュルとタルに巻き着いていった。
縦横に規則正しく巻き付かれた髪の毛は、まるで3Dモデルのワイヤフレームのようだ。
リサは、そっと目をつむると、樽に巻き付かれた銀の髪の毛が白く発行しはじめ、再び何やらブツブツとつぶやき始めた。
呪文? いや違う。どこかで聞いたことある単語だ。俺は耳をすませる。
「……高さ87.56センチ、幅58.23センチ~78.23センチ。容積 158.987 294 928リットル……北緯52度30分59秒 東経13度22分39秒……座標スキャニング完了……」
リサがつぶやくのをやめると、光っていた髪の毛がひときわまばゆく光る。その光はゆっくりと暗くなっていきやがて輝きを失うと、樽に巻かれていた銀色の髪の毛は、跡形もなくなっていた。
俺があっけにとられているとリサは「ふう……」とため息をついて、閉じていた瞳をゆっっっっっっっくりと開ける。
「さ、準備は出来たわ。物件の内見に行きましょう」
「え? あ……はい、コッチです!!」
俺はリサを先導して、物件へと案内していく。
それにしても、さっきの不可思議な呪文? は何だったんだろう。
この世界には、メートル法は無いはずだ。
そして緯度経度にいたっては、この世界が球体であることすら解明されていない。
ひょっとしてリサって、俺と同じ転生者??
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