エンドレスドッグデイズ3
津多 時ロウ
―――
俺には、蒸し暑い季節になると決まって思い出す、ある出来事があった。
ていうか、現在進行形だったりするんですけどね。
昼間の俺は、不動産会社の爽やかイケメンと一緒に、手頃なアパートを物色していた。
最近の昇給のお陰で、ようやく前のぼろアパートを出る気持ちになれたのだ。
今のアパートも悪くはないのだが、何しろ出るのだ、アレが。
悪さはしないが、寝不足になることもあって、やはりいつかはと思っていた。
そのような事情があるから、ワイシャツに逆三角形ボディを滲ませるイケメンに事情を話し、某物件で一晩過ごさせて下さいお願いしたところ、二つ返事で合鍵を渡してくれたのだった。
当然、アレが出る話は聞いたことがありませんと言うのだが、その結果が今だった。
寝苦しい夜中、ふと目が覚めると同時、悪寒が体を駆け巡る。
もうすっかり慣れたその感覚に、やはりここもアレが出るのかと、どんなアレが出るのかと、何だか少しドキドキしながら出番を待ってしまった。
するとどうだろう。
金縛りの中で何故か見渡せる部屋にいたのは、ひらひらとはためく純白のふんどしに、鍛え抜かれた逞しい太もも、健康的なお肌に、ふんどしと同じくらい眩しい笑顔のマッチョだった。
そんなマッチョ二人組が、声を掛け合いながら次々とポーズを変えては、筋肉を見せつけてる。
ていうかお前ら、前のアパートにいた筋肉じゃね?
こっちについてきちゃったの?
ちゃんと地縛霊の仕事しろよ。
そんな不満を漏らしつつも、どうも違和感を覚える。
そうだ。
前のアパートにいたのは、ブーメランパンツだった。
こっちはふんどしなのである。
似て非なる別マッチョなのだった。
けれど、そんな違いはどうでもいい。
出るということが分かった以上、ここは無しだな、とそう思ったとき、「はーい!」と三人目の声が聞こえた。
諦め半分にそちらを見ると――
「やだ、イケメン」
そこにいたのはふんどし一丁でポーズを決める昼間のイケメンだった。
エンドレスドッグデイズ3 津多 時ロウ @tsuda_jiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
津多ノート/津多 時ロウ
★38 エッセイ・ノンフィクション 連載中 810話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます