第30話 初めてのチュウ

 晴れて魔界で生活すること、そしてクローナの世話になることを大魔王と六煉獄将に認められた俺とジェニ。

 浮かれたクローナがザンディレに命じてパーティーでもしようかと提案したが……


「しゅぴ~、しゅぴ~……」


 ジェニが寝てしまった。


「あらあら、ジェニったら……」

「結構はしゃいで力を使っちまったからな」


 ジェニを抱きかかえながらジェニの部屋のベッドに運ぶ。

 六煉獄将ガウル相手に連続で沢山魔法を使ったから、怪我は無くとも、少し疲れたんだろう。

 たとえ魔力があっても、俺との訓練でもあれだけレーザー使ったり大魔法を使ったりしなかったしな。


「んふふ~、かわいいです~私の妹……かわいい私の妹です~♪ 私の妹なのです~角もとっても可愛いです♥」


 参謀からもらった薬で「頭部からクローナとお揃いの二本の角」を生やしたジェニ。

 すやすやと眠るジェニの頬をプニプニと指でつついたり、生やしたての角を指でなぞったりしながらデレっとなるクローナ。

 本当に愛おしそうに姉バカ全開で、本当にジェニを大切にしてくれるんだと安心してしまう。

 ただし、それは……


「でも……ジェニ……寝ちゃいましたね」

「あ、ああ……」

「んふふふふ~」


 俺に対しても……ただし、俺に対しては別の感情が入り混じっている感じで……そう言って、俺の手を指を一本一本絡めるように繋いでくっついてきて、やわらかいいにおいで……っていうか、俺の身体……


「エルセ、身体……大丈夫ですか?」

「…………」

「エルセの角も似合ってますけど……んふふふ、無理はいけませんよ? 男の子があの薬を飲んだら副作用があるのは仕方ないのですから」


 俺もジェニと同じように薬を飲み、魔界で暮らしやすくするための変身薬で角を生やした。

 だが、時間が経つにつれて体中が熱くなり、心臓もバクバクになり、それに…………


「はあ、はあ、いや、まっ……」


 ヤバい……クローナがかわいい……この柔らかそうで美しい体……オレダケノモノニシタクテタマラナイ。

 

「いや……さ、流石にそれはマジかと……いや、流石に俺ら会ったばかりだし……」

「ん~……でも、こういうのは時間というよりタイミングかなと……私はエルセに運命を感じましたし」


 クローナの身体は胸や尻が大きいわけでもない小ぶりな身体だけど……こんな美しく可愛いお姫様にここまでされて興奮しないわけがなく、今は薬の副作用で俺の理性もヤバくなり、クローナは既に受け入れ態勢だ。

 魔族と人間で貞操観念が違うのか? いや、でもクローナは人類連合の連中に捕まって犯されそうになったときは必死に抵抗してたし……あぁ……でも……


「ほら、来てください、エルセ……」


 手を引っ張られてどこかへ連れて行かれ……俺の部屋じゃない……可愛らしい模様や家具やらが置かれ、一人で寝るには大きすぎるキングサイズっていうんだっけ? あのベッド。

 ここ、クローナの寝室で……


「クローナ……」

「エルセ……えへへ、この部屋に男の子を連れ込むなんて初めてです……」

「っ!?」

「でも、もうここまで来たら……逃がしてあげませんよ~?」


 悪戯しているみたいに微笑むクローナ。純真無垢の優しいお姫様が見せる小悪魔な一面。

 だけど、俺と繋いでいる手は震え、その顔も照れて真っ赤になっている。

 クローナも緊張して、だけど……「しよう」と誘ってくれているわけで……



――エルセ!


――エルセくん……♥


――エルセ殿!



 ほんの一瞬だけ、あいつらが過りそうになったが、もう考えない。

 俺は今、こうして俺とジェニを救ってくれて、俺に対しても種族を超えて好意を寄せてくれる女の子の……


「んちゅ!」

「あ、ん―――――!」


 唇を無理やり奪っていた。

 柔らかい。

 初めてのキス。

 これがキス。

 プルっと震える唇と互いの唾液が交わる音が響く。

 それが愛おしくてたまらなくなり、力を入れたら壊れてしまうのではないかと思えるほど華奢なクローナを乱暴に抱きしめた。


「……ん♥ ぷはっ、私のファーストキスです……」

「お、俺も……」

「~~~♥ ん~~ちゅっ!」

「んっ!」


 クローナも俺が辛抱できずに力強く抱きしめながら唇を奪ったことに驚いた様子で一瞬硬直した。

 だけど、すぐに受け入れて俺の首に両腕を回して自らも求めてきた。


「あら~……しちゃいましたね……私たち」

「ご、ごめん……」

「ダメです、もう謝ってもこれで打ち止めも許しません♪」

「ふぁ、ク、クローナッ!?」

「最後まで、責任……ですよ?」


 むしろ、俺以上にクローナも何かのタガが外れたかのように求めてきて、クローナから俺に抱き着いて押し倒してきた。

 俺はそれを強く抱きしめ返しながら俺からも手を出す。

 互いに少しずつ乱暴になり、クローナは……白……


「あ、あぅ、めくれちゃってます……」

「わ、あ、その……」

「……で、でも……いいんですよね、だって……今から……おせっせ……」

「ッ!?」


 短いヒラヒラのスカートが捲れあがっているのに気づいて少し恥ずかしがるクローナだが、顔を真っ赤にしながらすぐにハニカム。

 もう、これ以上の辛抱は無理だ。

 もう俺たちを遮るものは―――――



「あいや、お待ちくださいませ、クローナ様! まだ毒味もしていないのに危険でございます!」


「「ッッ!!??」」



 そのとき、天井裏からザンディレが首をニョキっと出した。


「ぷはっ……ざ、ザンディレ、な、なんですぅ! 流石に無礼ですよぉ!」

「いえ、クローナ様、言ったでしょう! この男は童貞だと。しかも今は例のクスリでドスケベ状態です。そのような状態で性欲の赴くままに乱暴にクローナ様を貪れば、クローナ様は壊れてしまうかもしれません」

「そ、それはそうかもですが……で、でも、私、エルセにならそういう乱暴なことされるのもいいかなと……そ、それに私と同じでエルセも初めてのようですし、初めて同士――――」

「クローナ様、女の処女に価値あれど、男の童貞など無価値です! いえ、むしろマイナスです! 一度も侵入を許さぬ城と、一度も城攻めをしたこともない兵士、どちらに価値があるかなど語るまでもありません! 価値無き男にクローナ様の身体をなど許されません!」


 ザンディレ……だから、こいつ、こいつ、なんってエッロイ体と格好してんだよ……クローナとは対極的で俺よりも背が高くスラっとして、胸も尻もデカくムチムチで、それでいてウェストはキュッとしまって……そして、尻に食い込むすごいパンツみたいな……あ、でもクローナはクローナの良さがあって……くそぉ! もう俺も訳が分からなくなってきた! 


「ですので、一度ぐらいは城攻めさせるべきということで……」

「はあはあはあはあ、え?」

「私が責められましょう」

「あーーーーー、ザンディレ、ずるいです! エルセは私のですよぉ!」


 クローナならまだしも大してよく知らん女にキスされそうに……だけど、クローナが守ってきて……


「イヤです、私が最初です!」

「いえいえここは私が最初に毒味を!」

「毒を食らわば皿までです!」

「何をおっしゃいますか、見てください。この男、更に興奮して凶暴になっておりますよ!」

「ふぁっ!? わ、あ、あ、すごい……これがエルセの……」

「というわけで、まずは先に―――」

「い、いえ、私も―――」


 どうしてこうなったか分からない。




 ただ、うん、まぁ――――――

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